富山発のWEBマガジン、SQUIDS magazineのクルーの活発な音楽活動を追う連載です。
(以下、記事の文中敬称略ですがご容赦ください)
第3弾はSQUIDS magazineの編集長でもある Carios について前後編でお送りします。
今回の前半は2013年上半期の簡単なディスコグラフィーです。
また、Carios & DKXOのユニットとしての活動に関しても改めて簡単にまとめています。
Cariosの2013上半期ディスコグラフィー
まずは1月に発売されたコンピ『160or80』に収録された「year-end tax adjustment」。JUKE × HIP HOPを繋ぐ大きなトピックとなったこのアルバムにCarios & DKXOとして参加。
謎(?)のトラックメイカーPICNICWOMEN作のエモーショナルなビート、強度を増した2人のリリック、Cariosの強みであるメロディー、ラストで交互にヴァースを分け合う構成までの全てがハマった名曲。アルバム中でも一、ニを争うアンセムとして、各所で話題になりました。
次いで2月に発表したのはKLOOZ 「SUPA DUPA feat. AKLO, BAN」のビートジャック。原曲のルールに則り、2重3重の言葉遊びで埋め尽くされた16小節。
Cariosのラップは一聴するとエモいメロディーに耳を奪われますが、こうしたワードプレイもまた彼のスタイルの特徴。
年始のポッセカット「こちらSQUIDSmagazine編集部」でも同様に、全てのラインにダブルミーニングを忍ばせたヴァースをキックしていました。
次なるアクションは初のインスト曲、「Baby Cruising Cloud」。
「Carios & DKXOでラップを載せたくて作りました」「inspired by friendzone, konyagatanaka」と本人がコメントしていた通りの、アレをサンプリングしたCloud Rapなトラックで、2人のラップが載せられる機会が楽しみな仕上がりに。
最後は海外アーティストとのコラボレーション。マイアミのトラックメイカー/ラッパーsiR astRoからの誘いに乗って客演した「Sacred Juixe」。
メロウなトラック or ネタ系サンプリングが多かったCarios過去曲と比べると珍しいシンセファンク系のビートに、ファルセットでのハモリ多用のスタイルで対抗。「マイアミよく知らないけどとりあえずノる」という姿勢もそのままリリックにした「なうをレペゼン」な曲の一つ。
(*最初はSoundcloudにのみアップされてたけど、いつの間にかBandcampのEPにも収録されてました。サンクラだと音悪かったのが、ちょっとマスタリングされたっぽい)
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Cariosの2013年上半期ディスコグラフィーはここまで。後半に続きます。
ただ、そこでの話題は2013年上半期のみに留まらずCarios & DKXOの処女作である2011年の「Local Distance」や、それ以前にも及んでいます。そこでおさらいとして、Carios & DKXOがユニットとして発表した楽曲に焦点を絞って彼らの足跡を以下に簡単にまとめました。
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Carios & DKXO
(たぶん)
1. Local Distance
CariosとDKXOは最近までラッパーではなかった。
2011年夏のある日、彼らがTwitter上で交流を持っていた謎のトラックメイカー、「今夜が田中」(今なお誰も彼の正体を知らない)が、突然ビートを送りつけてきたのだ。2人はとても驚いた。それまでラップの経験など全く無かったのだから。だけど彼らはその無茶ブリにノった。悪戦苦闘しつつも、なんとか初めてラップの録音をした。
今夜が田中のトラックは宇多田ヒカルの「Final Distance」をサンプリングしたもので、2人はそこに、常日頃から感じていた大都市と地方の間の距離感についてのリリックを載せた。そして完成したこの曲は「Local Distance」と名付けられた。
「Local Distance」は発表されると同時に様々な反響を呼んだ。東京のラッパー/トラックメイカーPUNPEEが参加した12インチが製作され、また、同じく地方都市から独力で作品を発表していたプロデューサーtofubeatsとOkadadaのユニット、dancinthruthenighsをはじめとした多くのアーティストがリミックスを発表するなど様々なリアクションがあった。
dancinthrunights 's "Local Distance (No Distance Remix)"
2. FRIENDZONEとのコラボレーション
「local Distance」に反応したのは日本国内だけでは無かった。オークランドのプロデューサー・チームFRIENDZONEが「Local Distance」を絶賛したのだ(FRIENDZONEはMain AttrakionzやA$AP Rockyのプロデュースなどで広く知られており、彼らがプロデュースした「Fassion Killa」を含むA$AP Rockyのアルバムは全米1位の大ヒットとなった)。これをきっかけに、まさかのコラボレーションが実現した。
Carios & DKXO "From Dusk Till Dawn" (Prod. by FRIENDZONE)
この曲でFRIENDZONEは岡田有希子をサンプリングした。(ちなみに岡田有希子はFRIENDZONEの主催するコンピレーション『Kuchibiru Network』の名前の元でもある)
また、その『Kuchibiru Network』シリーズのVol.2には「Local Distance」が、Vol.3には今夜が田中がプロデュースを務めたMain Atrakkionzの「Not Luv」が収められている。
3. Winternet Archive
Carios & DKXOが次に発表したのは、再び今夜が田中とのコラボレーションとなった「Winternet Archive」。
ここでサンプリングされたのはGet Up Kidsの「I'll Catch You」だった。これは以前それぞれ別のハードコアバンドに所属していたというCariosとDKXOの出自にも繋がるようなチョイスであり、それと呼応するかのように、2人は自分たちにとってもう1つの原風景である富山の、雪に囲まれた冬の生活をリリックで描写した。
この頃から2人はソロ曲や、国内外を問わない幅広い様々な客演も披露。
DKXOはLAでFRIENDZONEやMain attrakionzとレコーディング。その「Have Faith」はMondre M.A.Nのソロアルバムに収録されている。
Mondre M.A.N feat. DKXO "have faith" (Prod. by FRIENDZONE)
また、FRIENDZONE主催のコンピレーション『Kuchibiru Network』の第3弾のアートワークも手がけた。
Main Attrakionz with DKXO ( Live in LA )
そしてCariosはマイアミのラッパー/トラックメイカーSir Astroとコラボした曲を発表するなどしている。
siR astRo x Carios "Sacred Juixe"
4. Year End-Tax Adjustment
世界からも注目される日本のJUKEシーンのトラックメイカーと、日本の様々なラッパーが手を組んだオムニバス企画『160or80』。ここでCariosとDKXOがコラボしたのは、日本のジューク・プロデューサーの中でも屈指のメロディアスなトラックを作るPICNICWOMEN。
このトラックでPICNICWOWENはCommonの「Resurrection」のフレーズを引用している。
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以上がCarios & DKXOのデュオとしての大まかなディスコグラフィーだ。(この他にも、ソロ曲やコラボ曲を含め彼らは様々な曲を発表している)
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FRIENDZONEはT.R.E.A.MのインタビューでCarios & DKXOについてこのように語っている。
(以下、T.R.E.A.Mのインタビュー記事を引用しています)
James: 彼らのフロウはとてもクリーンだし、Cariosのフロウは特にメロディアスだよ。 そして”Local Distance”はビートも本当にクラシックだと思う。
Dylan: Main Attrakionzもとてもメロディアスだし、”Local Distance”を聴いた時から僕らと化学反応を起こすハズだと確信したよ。僕はCariosのラップを聴いてBone Thugs-N-Harmonyを思い出したんだ。彼らこそがクラウド・ラップの原点だと思ってる。 クラシックなラッパー達の多くはあまりメロディアスじゃないけど、Cariosにはそれがあるし、僕らのビートも同じようにメロディックでしょ?
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っていう感じでCarios & DKXOのユニットとしてのアレを書きました。このへんの流れって、この記事を読んでくれてるような方なら「だいたい知ってる」って人も多いと思うんですけど、海外の人にも知ってもらえるチャンスがあるといいなと思って英語にしました。なんか波及したらおもしろいなーと思います。
では後編に続きます~。