2015年6月13日土曜日

【KOITAMAさんインタビュー】ラップ、ビートメイク、DJ…。様々な音楽制作や、独特なラップスタイル、そして“高橋くん”について



東京・埼玉を中心に活動するKOITAMAさんというアーティストがいます。

「ラッパー」とか「DJ」でなく、「アーティスト」と何だかボンヤリした言い方になってしまうのは、KOITAMAさんの多岐にわたる制作活動を一言で表すのがなかなか難しいからです。

人によっては、KOITAMAさんのことを個性的な「ラッパー」として知っているでしょうし、また別の人は、MPC色の強い太い鳴りのヒップホップを作る「ビートメイカー」だと認識しているかもしれません。

あるいは、韓国や東南アジア、チリやフィンランドまで、各国ご当地のヒップホップをMIXする「DJ」として記憶している人もいると思います。


私が初めてKOITAMAさんを知ったのはラッパーとして。
2013年夏にリリースされた楽曲、DKXOさんをfeat.した「PLAYING」のPVでした。


このPVは北陸を代表する名瀑、
富山県の“称名滝”で撮影されています


Hi-Hi-Whoopeeでの記事にて荻原アズサさんが書かれていた、「舌足らずでけれども挑発的なほど丁寧なラップ」という表現がピッタリなゆっくりとしたフロウは、それまであまり聴いたことがないタイプのラップでした。

そのときはまだ「個性的なラッパー」としてしか知らなかったのですが、作品を追って聴くにつれ、

・1st EPではほぼ全曲のビートを自ら制作している
・世界各国のご当地音楽をつなぐオンリーMIXも多数発表

など、ラッパー以外にも様々な顔を持っていることがわかってきて、「この人、いったい何なんだろう…?」と、どんどん気になる存在となっていきました。


そんな風に一見、全貌が掴みにくいKOITAMAさんの活動は、実はご自身のサイトKOITAMA.COMにて詳しく纏められているのですが、今回はそのディスコグラフィーからここでもいくつか抜粋してご紹介したいと思います。

(画像をクリックすると、KOITAMA.COMの作品紹介ページへ飛びます。各作品の試聴はもちろん、ダウンロードリンクやPVもまとまっているので是非チェックしてみてください)


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ラッパーとしてのまとまった作品




2013年の1月に発表した、自身初のEP。

本作以降は他のビートメイカーとのコラボも多いですが、ここでは1曲を除いたほぼ全曲で自身がビートを制作。このEPを聴くと、自作トラックでの作品集もまた聴かせてほしいと思います。
10曲目「Loneliness」の朴訥とした情念が素晴らしいです。



AIWABEATZさんとSHOT-ARROWさん、2人のビートメイカーとの連名でのEP。上に貼ったPVの「PLAYING feat.DKXO」も収録。

ビートが異なる2バージョンを収録した「Party People」のカタカナ英語的な発音が強く耳に残ります。レコード屋巡りの情景描写に、この後の作品でも登場する“高橋くん”との思い出を挟みこんだ「ディスクユニオン」も印象的。




大阪のビートメイカー/DJのchop the onion氏とのコラボ作。

メロウな表題曲でのフックや、モタるドラムとホーンもかっこいい「Avocado Burger」のリリックなど、Twitterでも時折コピペされるパンチラインを多く含む作品。また最終曲では再び“高橋くん”が登場。




上掲の『WEEKEND EP』のアートワークも手がけた盟友、おひたしアナルさんとのコラボEP。おひたしさんの羅列ラップはKOITAMAさんとの相性もばっちりです。

ビートは自作の2曲の他、音墨さん・Psychic Gangstaさん・yung new sweatshirtさんなど。またラップでは森光光子さん・MCビル風さんと、多彩なゲストを迎えています。EP本編には収録されていませんが、「Internet」のcariosんによるリミックスも。




ここまでで何だかもう結構長く書いてしまったので少し駆け足でいきますが、続いてビートメイカー/DJとしての活動も見て行きましょう。

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ビートメイカー/DJとしての作品




自身の楽曲でのMPC色の強いヒップホップ的な鳴りのビートの他、レーベル“術ノ穴”のコンピレーションに収録のTomobitchさんの「SOS FROM SNS」ではメロウなシンセループが美しいビートを提供。



また、Tomobitchさんは今年4月に3曲入りのフリーダウンロードEPを発表しており、
ここでもKOITAMAさんが全曲のプロデュースを務めています。


そしてDJとしての活動では、チリやフィンランド、韓国・東南アジア、はたまたブラジルなど、世界
各国さまざまな国のヒップホップのオンリーMIXを制作。



他にも日本と韓国・それぞれの90年代POPSのオンリーMIXなど、さまざまなテーマで聴き応えあるDJ MIXを発表しています。






こうしたいろんな国のヒップホップやポップスを並行して掘っていく感覚は、KOITAMAさんの2014年BEST10のバラエティ豊かなラインナップにも表れているように思います。

また同ブログでは、シンガポールやタイを訪れた際の旅行記と合わせ、
現地でのレコード屋巡りの様子も。
あんなにいろんな国のご当地音楽のDJ MIXをどうやって…、と不思議に思っていましたが、このようなブログ記事はそうしたMIX制作の裏側のようで、楽しく読めます。

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さてさて、
ここまで読んでいただけた方はKOITAMAさんという人がわかったような、いやよりわからなくなったような、不思議な感覚だと思います。

それではご本人にお話を聞いてみましょう!ということで、KOITAMAさんにインタビューをさせていただきました!

音楽にのめり込むようになったキッカケから、ラップでの独自の発音、ビートメイキングやDJのこと、そして“高橋くん”のことまで、いろいろとお話を伺っています。



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KOITAMAさん インタビュー





Q1. 初めにご自身について、簡単な自己紹介をお願いします。

群馬出身、埼玉在住、毎日東京まで通勤する音楽好きのサラリーマンです。
年齢は… 30代です。


Q2. 音楽を好きになったきっかけを教えてください。

きっかけは小学2年生のとき、父親の勧めで音楽教室に入ったことだと思います。

最初は嫌々でしたが、少しずつ自分から興味を持つようになり、音楽教室の帰りにレンタルレコード店に行くようになりました。


Q3. その後の音楽遍歴を教えてください。


中学生の頃は吹奏楽部に入りつつ、ビートルズとかレッドツェッペリンとか洋楽のロックを聴いていました。
高校生の頃からパンク、ハードコア、ロカビリー、サイコビリー、ヒップホップなど雑多に聴くようになりました。

某服飾専門学校に進んでからロンドンナイトに行ったり、パンク、ニューウェイブのレコードを集めるようになりました。そのうち学校の課題提出が追いつかなくなり、退学しました…。


1年くらいフリーターをした後、別の専門学校に入学しました(笑)。そこで高橋君という友達に出会い、レコードのことを沢山教えてもらいました。トラック作りもその頃始めました。

その後、地元の後輩にトラックを提供するようになり、デモテープもいくつか作りました。ブラストのデモテープのコーナーに掲載されたこともあります(笑)。続けていくうちに自分のイメージと乖離があることに気づき、ラップも始めました。


Q4. ラップする際のゆっくりと話すようなフロウや、
カタカナ英語的な発音は個性的ですが、ラップを始めた初期から独特のスタイルは確立されていたのでしょうか?スタイルの形成段階で誰か影響を受けたラッパーはいますか?

英語の発音が難しくて自然にそうなりました。
潜在的に影響を受けた人はいると思いますが、明確にこの人というラッパーはいないと思います。

カラオケでラップするときはその人になりきりますが…。


Q5. これまでに共にまとまった作品を作ったAIWABEATZさん/SHOT-ARROWさんや、CHOP THE ONIONさん、おひたしアナルさんについて、それぞれコラボレーションに至った経緯などあれば教えてください

『PLAYING EP』、『WEEKEND EP』はそれぞれ声をかけてもらって制作しました(感謝!)。


『ACID ANAL EP』はおひたしと遊びながらノリで作りました。


Q6. またラッパー諸氏との共作では、過去に数度コラボしているNICE GUY$や、
DKXOさん、森光光子さん・MCビル風さん、cariosさんなど多くのラッパーと共演されていますが、こうした人選はどういう基準で選ばれてたのでしょうか?

NICE GUY$から声をかけてもらったり、AIWABEATZからDKXOくんを紹介してもらったりして制作しました。

誘っていただけることはすごくありがたいことなので、タイミングが合えばいつでもやりたいです。

森光さんとビル風さんはオモシロイ曲になりそうな予感がしたので、トラックを聴きながらおひたしと決めました。
森光さんもビル風さんも僕と同じくラップもするしトラックも作るのでシンパシーを感じています。

「Internet」はシングルで発表したときにcariosくんからトラックの評価をいただきつつ、ラップものせていただけることになりました。
自分のトラックにcariosくんのラップがのったことがすごく嬉しかったです。


Q7. ほぼ全曲のトラックを自作した『Love Ya Like』での陰りのあるビートはいかにもMPC的な鳴りですが、ビートメイク作業は全てMPCで完結されているのでしょうか?また、近作では他のビートメイカーとのコラボが多いですが、自作曲中心の作品は今後リリース予定はありますか?

『Love Ya Like』は9割サンプリングなので、AKAI MPC1000でほぼ完結しています。今はAKAI MPC1000でチョップしたり、ループ組んだり曲の軸を作ってから、Ableton Liveでドラム、ベース、メロディなどを追加しています。

非効率ですが、いろいろ試した結果MPCの波形が一番信用できるのでこの形になりました。自作曲中心の作品は今制作中です!


Q8. 『Playing Ep』の「ディスクユニオン」に登場し、その後「Takahashi Kun」という曲もリリースされた"高橋くん"は実在の人物なのでしょうか?今後も"高橋くん"についての曲をリリースする予定はありますか?


前述の高橋君のことです。実在の人物かつ、曲中のシーンも実話です(笑)。高橋君にレコードのことを沢山教えてもらってから世界がひらけました。

今、高橋君は埼玉県で多目的スペースを運営しつつ、フリージャズのライブなどを企画しています。今後も曲中にはチラッと登場するかもしれません。高橋君からの影響は大きいです。


Q9. また、DJとしての活動についても質問させてください。これまでに多くの韓国音楽MIXをはじめ、東南アジア・チリ・ブラジル・フィンランドなど世界各国・さまざまな国の音楽でDJ MIXを制作されていますが、
こうした音楽はどのように調べて掘られているのでしょうか?また、今音楽的に注目している国などありましたら教えて下さい。

9割ネット、1割本で調べています。

「国名 RAP」でYOUTUBE検索して、気になるアーティストを見つけたら、DISCOGSでリリース状況、LAST FMでその周辺のアーティストを調べます。

音源はiTunes、Bandcamp、Amazon MP3などで手に入れます。どうしてもフィジカル盤でしか手に入らない音源は現地のサイトで購入します。

気になる国はいろいろありますが、ネットでフィンランドのヒップホップシーンの相関図を見つけたので、またじっくり調べたいです。


Q10. 今までに聴いた音楽から、今の気分でのベスト・アルバムを3枚と、
オールタイム・ベストのアルバムを1枚教えて下さい。

今の気分でのベスト・アルバム:

Brian Eno / Music for Airports
Penguin Cafe Orchestra / Music From The Penguin Cafe
タイプライター / 0 (ゼロ)

オールタイム・ベストのアルバム:

Steve Reich / Music for 18 Musicians


Q11. 今後の展望や構想、予定しているリリースなどありましたら教えてください。

全曲自作トラックのアルバムをとにかく早めにリリースしたいですビートテープも作りたいですし、トラックの提供もしたいです。

あと地元の後輩でオモシロイ奴がいて、そいつのアルバムを作ってツイッターのタイムラインに放り投げたいです(笑)。
普段インターネットもライブもやらない奴なんですけど、黙々とレコードを買ったり、フリースタイルをしたりしてるんですよ。インストを10曲作って渡してから、もう2年経っても進んでいないので、実現不可能かもですが…。

いろいろやりたいことはありますが、コツコツやります。^^



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はい!というわけでインタビューさせていただきました。


このインタビュー以外でも、上でも引用させていただいたHi-Hi-Whoopeeでの萩原アズサさんの記事や、韓国ヒップホップ情報サイトHIPHOP [K]ONVEYで行われた韓国ヒップホップについてのインタビューなどもすごくおもしろいので、ぜひ読んでみてください!


今回スペース的に取り上げきれなかった他の楽曲も様々なコラボを含む良い曲いっぱいですし、今後もKOITAMAさんはコンスタントに作品を発表されると思います。

KOITAMAさんのTwitterSoundCloudKOITAMA.COMでのブログなどでこの後もぜひKOITAMAさんの活動をチェックしてみてください!