2012年11月18日日曜日

Erik griswoldのプリペアド・ピアノ


作曲家・演奏家Erik Griswoldについて少し書きたいと思う。

プリペアド・ピアノを主な楽器とするErik Griswoldは、オーストラリア在住のアメリカ人。

彼の音楽はジャンルとしては「現代音楽」に分類されるが、

「Guaguanco」などの曲で聴かれるパーカッシブな演奏は、
ガムランのアンサンブルにも喩えられるなど、ソロのピアノ演奏でも非常にリズミック。

普段ビート音楽に親しんでいる人なら、一聴して「踊れる」と判断すると思う。


ちなみに本人はこの曲について
「キューバの”Guaguanco”のリズムを僕なりに解釈したものだ」
と述べている。

”Guaguanco”については次回以降のエントリーで取り上げたい。




もう1曲、こちらは「Wallpaper Music 1」。

この曲名からはブライアン・イーノの提唱した「家具の音楽」が連想されるが、
実際の楽曲は細かな不協和音が絶えず鳴り続け、不穏な緊張感を纏っている。
とても「アンビエント・ミュージック」とは呼べそうにない。

この「Wallpaper Music」シリーズで、Erikは現在までにアルバム3枚をリリースしており、
現在の彼の活動のメインになっていると思われる。

「Wallpaper musicでは、僕はピアノの全ての弦に仕掛け(プリペア)を施す。
ゴムやボルト、紙なんかも使ってね。そうやって過激な形でピアノを”再調律”するんだ」





彼の作曲家としての顔も見てみよう。



この動画は彼の作曲した「In The Dream, Part 1」という楽曲を、6人の打楽器奏者が合奏するもの。

ステージ中心の2人を軸に、各演奏者のパートが入れ替わり、強弱のコントラストが緊張感を高めていく。

このうち1人はメルボルンで活動する日本人パーカッショニスト、オモテノゾミ。
彼女が叩いてるデッカいバネみたいなの、あれ、何なんだろう。




こちらは女性打楽器奏者、Vanessa Tomlinsonとのコラボレーション作品。

大きな振り子からこぼれおちる砂粒を様々な陶器や銅板、紙や打楽器で受け止め、
その配置によってメロディーを奏でていく。



このVanessa Tomlinsonとは
「Clocked Out Duo」名義としての演奏活動も10年以上継続しており、
現在までに3枚のCDもリリース。

インプロヴィゼーションの要素も強いユニットで、おもしろい映像が多数残されている。



カリ、コリと引っ掻くようなプリペアド・ピアノの音が耳に残る。
3:30からの、リズムが複雑さを増す瞬間が素晴らしい。




2012年来日時の六本木スーパーデラックスでのライブ。
Erikはベース・メロディカを吹き、Vanessaは、2本のロープを操りシンバルなどを鳴らしている。

何だこれ。




上の演奏と同趣向の作品になるのか、

2011年には様々な打楽器演奏の実験を行う
「Speak Percussion」プロジェクトにも作曲家として作品を提供。


こちらも6人の打楽器奏者のステイックにはロープが結ばれ、
またそれぞれのロープは中央で繋がっており、演奏と視覚的にも連動している。







また、本人の公式ウェブサイトでは、
トップページを開くと簡素なオルゴール音が流れるようになっている。

http://www.erikgriswold.org/


この「From Heaven Above」と名付けられた美しいオルゴール曲には
”Altered and processed music box”との注釈がつけられている。


これは単に”経年劣化したオルゴール”というニュアンスなのか、
それとも”手を加えられたオルゴール”という意味か。

もし後者ならば、「プリペアド・オルゴール」とでもいうような音楽表現が存在するのだろうか?






このように、駆け足でザッと観ただけでも様々な活動を行う現代音楽家、Erik Griwold。

端的に言えばおもしろおじさんである。


彼のことはSoundcloudで偶然発見したのだが、その時点で彼のSouncloudアカウントのフォロワーは14人。
その1ヶ月前に公開されていた「Wallpaper Music 1」の再生回数はわずか1回だった。
(というかその1回って、本人によるテスト再生では…?)


演奏家としての活動も長く、作曲家としても様々な作品を手がけるErik Griswold、決して無名の人ではないと思うのだが…。
オーストラリアの彼の周辺シーンでは、Soundcloudの利用が一般的ではないのだろうか?



今後、彼の周辺のシーンも取り上げたいと考えているので、、そのあたりにも触れていきたいと思う。