2012年11月27日火曜日

KRTSと、レーベルProject: Mooncircle




ベルリンのレーベル、Project: MooncircleからリリースされたKRTSのアルバム。




Bandcampでは2曲目「Fire」しか試聴できなかった本作ですが、
新たにこの度「Regret To Retreat」のPVが公開されました。



アルバムタイトルがThe Dread Of An Unknown Evilで、
PVには冒頭からスパイキー・ヘアのかわいらしい少女が。

すわ、もしやこの女性がKRTSなのか、と画像検索をしたところ






Devilでした。


しかしながら楽曲は美しく、ベルのように響く鍵盤の音が印象的。




Project: MooncircleTa-KUとPavel DovgalのスプリットアルバムやRobot Kochの諸作の他、
KidkanevilDaisuke Tanabeのコラボ作『Kidsuke』
現在日本在住のビートメイカーSubmerseのアルバムもリリースするなどしています。



とか書きながらSubmerseのアルバム未チェックだったので、今初めて聴いたのですが、 これむっちゃかっこいいですね…。



コンピレーション「The Moon Comes Closer」には
上記のような面々に加え、Kan SanoHimuro Yoshiteruらも参加。



「厳しいモスクワから、月へ逃れたいと夢見た少女、Jinna Morochaの物語」というテーマの元、
様々なビートメイカーが楽曲を提供しています。



”これは月に飛んでいく幻想を抱いたロシア人女性 Jinna Morocha の物語です。 
このロシア人が最初にはっきりと月に関する夢を見た時、彼女はまだ少女で、モスクワが厳しい時期と向き合っていた頃でした。 
この鮮明なビジョンは彼女の心にとどまり、やがて『どうしたら月にいけるのだろう』と考える様になりました。 
その後現在ドイツに住んでいる Jinna が私たちにコンタクトを取って発した『月に連れて行って』という質問に私たちはためらいました。 
私たちは『それは出来ないけど頭の中でなら君を月まで運んでいくことは出来るよ、君のビジョンにサウンドトラックをつけるから、目を閉じて、そこで旅をしたらいい』と答えました。
この言葉が始まりでした。 
The Moon Comes Closer は頭の中で描く月への旅のサウンドトラックです ”

Young Wonder - To You (Ambassadeurs Remix)




UK、ブライトンのAmbassadeurs
Young Wonder「To You」をチルウェイブにリミックス。

フリーダウンロードで公開されている。




Young Wonderはアイスランドの男女デュオ。
原曲PV ↓



このPVでもハッキリ示されているように
この曲は葬送歌、鎮魂歌だと思うんだけれど、

ヴォーカルがスクリューされたことによりエモさが増していて、
この歌詞 ↓ がより印象的に響く。

"can you get to sleep tonight?
i think the pain in my ribs has subsided,
and then i will close my eyes.

see you, see you in the next life.


run wild, voice loud, i'm screaming and screaming.
dress wet, our minds set, we're dreaming and dreaming.
fingers go numb, i've lost all feeling.

Where does this take me i'm praying, kneeling.

....i'll see you again"



また、原曲でイントロから印象的に響くヴァイオリンの短いフレーズが、
同じくピッチを落としたことで、こちらはテープ逆回転のように聴こえる。



フランスのDiscodeineによるPara Oneリミックス



先日PVも公開されたPara One「When The Night」





この曲をリミックスしてて知ったDiscodeinがかっこよかった。




フランスの2人組ユニットで、名前のとおりのTHEディスコ感。
でも「ディスコ」+「コデイン」なのかな。コデインのドロドロ感は全然無いですね。



2010年にDFAからリリースした12" 「Synchronise」は、
ジャーヴィス・コッカーがヴォーカル参加ってのもあって結構ヒットしたっぽい。



この曲も収録したアルバム『Discodeine』が2011年にフランスのレーベルPscentからリリースされてる。
これはレーベルの公式サイトで全曲試聴できるです。





2012年11月18日日曜日

Erik griswoldのプリペアド・ピアノ


作曲家・演奏家Erik Griswoldについて少し書きたいと思う。

プリペアド・ピアノを主な楽器とするErik Griswoldは、オーストラリア在住のアメリカ人。

彼の音楽はジャンルとしては「現代音楽」に分類されるが、

「Guaguanco」などの曲で聴かれるパーカッシブな演奏は、
ガムランのアンサンブルにも喩えられるなど、ソロのピアノ演奏でも非常にリズミック。

普段ビート音楽に親しんでいる人なら、一聴して「踊れる」と判断すると思う。


ちなみに本人はこの曲について
「キューバの”Guaguanco”のリズムを僕なりに解釈したものだ」
と述べている。

”Guaguanco”については次回以降のエントリーで取り上げたい。




もう1曲、こちらは「Wallpaper Music 1」。

この曲名からはブライアン・イーノの提唱した「家具の音楽」が連想されるが、
実際の楽曲は細かな不協和音が絶えず鳴り続け、不穏な緊張感を纏っている。
とても「アンビエント・ミュージック」とは呼べそうにない。

この「Wallpaper Music」シリーズで、Erikは現在までにアルバム3枚をリリースしており、
現在の彼の活動のメインになっていると思われる。

「Wallpaper musicでは、僕はピアノの全ての弦に仕掛け(プリペア)を施す。
ゴムやボルト、紙なんかも使ってね。そうやって過激な形でピアノを”再調律”するんだ」





彼の作曲家としての顔も見てみよう。



この動画は彼の作曲した「In The Dream, Part 1」という楽曲を、6人の打楽器奏者が合奏するもの。

ステージ中心の2人を軸に、各演奏者のパートが入れ替わり、強弱のコントラストが緊張感を高めていく。

このうち1人はメルボルンで活動する日本人パーカッショニスト、オモテノゾミ。
彼女が叩いてるデッカいバネみたいなの、あれ、何なんだろう。




こちらは女性打楽器奏者、Vanessa Tomlinsonとのコラボレーション作品。

大きな振り子からこぼれおちる砂粒を様々な陶器や銅板、紙や打楽器で受け止め、
その配置によってメロディーを奏でていく。



このVanessa Tomlinsonとは
「Clocked Out Duo」名義としての演奏活動も10年以上継続しており、
現在までに3枚のCDもリリース。

インプロヴィゼーションの要素も強いユニットで、おもしろい映像が多数残されている。



カリ、コリと引っ掻くようなプリペアド・ピアノの音が耳に残る。
3:30からの、リズムが複雑さを増す瞬間が素晴らしい。




2012年来日時の六本木スーパーデラックスでのライブ。
Erikはベース・メロディカを吹き、Vanessaは、2本のロープを操りシンバルなどを鳴らしている。

何だこれ。




上の演奏と同趣向の作品になるのか、

2011年には様々な打楽器演奏の実験を行う
「Speak Percussion」プロジェクトにも作曲家として作品を提供。


こちらも6人の打楽器奏者のステイックにはロープが結ばれ、
またそれぞれのロープは中央で繋がっており、演奏と視覚的にも連動している。







また、本人の公式ウェブサイトでは、
トップページを開くと簡素なオルゴール音が流れるようになっている。

http://www.erikgriswold.org/


この「From Heaven Above」と名付けられた美しいオルゴール曲には
”Altered and processed music box”との注釈がつけられている。


これは単に”経年劣化したオルゴール”というニュアンスなのか、
それとも”手を加えられたオルゴール”という意味か。

もし後者ならば、「プリペアド・オルゴール」とでもいうような音楽表現が存在するのだろうか?






このように、駆け足でザッと観ただけでも様々な活動を行う現代音楽家、Erik Griwold。

端的に言えばおもしろおじさんである。


彼のことはSoundcloudで偶然発見したのだが、その時点で彼のSouncloudアカウントのフォロワーは14人。
その1ヶ月前に公開されていた「Wallpaper Music 1」の再生回数はわずか1回だった。
(というかその1回って、本人によるテスト再生では…?)


演奏家としての活動も長く、作曲家としても様々な作品を手がけるErik Griswold、決して無名の人ではないと思うのだが…。
オーストラリアの彼の周辺シーンでは、Soundcloudの利用が一般的ではないのだろうか?



今後、彼の周辺のシーンも取り上げたいと考えているので、、そのあたりにも触れていきたいと思う。












2012年11月16日金曜日

Bandcampにおけるザ・ストロークスの「ジュリアン・カサブランカス」タグ


前回のエントリーでFriendly Ghostを紹介した際、
その作品につけられた「Julian Casablancas」というタグについて触れた。


ジュリアン・カサブランカスはザ・ストロークスのヴォーカリスト。

2001年に鮮烈なデビューを果たしたストロークスは
そのシンプルかつぶっきらぼうなサウンドで
ガレージロック・リバイバルの大波を引き起こした。

大げさでなく、当時のロック・シーンを一気に塗り替えた存在と言えるだろう。



ストロークスの簡素だがツボを抑えたバンド・アンサンブルは
多くのフォロワーを生み、
その後大ヒットしたアークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドらも
彼らからの影響を公言した。


一見、ストロークスとは関係ないように見えるFrindly Ghostも、
「Someday」をカヴァーするなど、
ザ・ストロークスから(おそらくは青春期に)多大な影響を受けていたのである。



そんなストロークスのフロントマンであり、
ソロでもアルバムをリリースしているジュリアン・カサブランカス。
Bandcampに彼の名前を冠したタグがあっても全く不思議ではない。



では、Bandcampの「Julian Casablancas」タグには、
他にはどんな作品があるのだろうか。


これがBandcampの「Julian Casablancas」タグのページ。

黒っぽいジャケの作品が複数あるが、
これは1枚のアルバム。

なので、都合7枚の作品があることになる。


まぁ、Bandcampのタグの常で、
「これのどこがジュリアン・カサブランカスなんだ…」
という作品も多い。

リンク切れしている作品もあった。












そんな中、気になったのはマレーシアのソロ・アーティスト、ZidによるカヴァーEP。


ややしわがれているが若々しい声で、
アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーなどを想起させる。

カヴァーしているアーティストも
ザ・スミスにストロークス、マッチボックス20と、非常に影響源のわかりやすいチョイス。

ちなみにここでカヴァーされている「I'll Try Anything Once」というのは
ストロークスの3rdアルバムの1曲目「You Only Live Once」のデモ・ヴァージョン。





このマレーシアのソロ・アーティストZid、

オリジナル曲集では使用ギターのモデル名を細かく記載するなど、
無邪気なギター少年のような一面も窺える。


ストロークスへの憧れが過剰な感じのギター・ロックと
唐突に挟まれるチップ・チューン曲が半々で、
うん、何だかよくわからない。

2005年ー2010年に作った曲の総決算ということだが、
その途中で、何かあったのだろうか。




彼はこの他に
ゲーム「ファイナル・ファンタジーⅠ」の戦闘BGMのカヴァーも公開している。

これはもうそのまんまで、ギター少年らしさも全開であり、
まぁ、もう、やりたかったんだろう。うん。いいんじゃないかな。





ゲーム好きなんだなーと思ったら、
このZid、本職はイラストレーター、漫画家らしく
本人のウェブサイトでは様々なイラストギャラリーとともに、
amazon.comで買えるコミックのリンクなども紹介されていた。



絵うめえ!























さて、前回紹介したFriendly Ghostを除けば、
このZidがBandcampの「ジュリアン・カサブランカス」タグにおける
代表アーティストということになる。


うーん。
カヴァーEPはいいと思うんだけど。


いや他のアーティストもいたけど、
他はもっと、うん。



というか、Friendly Ghostは別格だから除くね、
みたいな言い方したけど
Friedly GhostのSoundcloud、フォロワー数、7人だった。








うん。



このように、
Bandcampにおける「Julian Casablancas」タグは、
大体、なんだかよくわからない作品につけられている。





Frindly Ghost






「キープ・クール・フール」さんの
Tumblr ページ「BANDCAMP WONDALAND」で紹介されていたこのアルバム。




LA在住のRob Tildenが1人で全ての楽器をこなすソロ・プロジェクト。

ドリーミーなシンセ遣いが特徴でいかにも宅録なローファイさもいい。
間違いなくメガネをかけているだろう系の音である。





















かけてた。


手弾きのシンセが特徴的なこのアルバムにはBandcamp上のインディー作品のセオリー通り、
検索に引っかかりやすいよう関連用語を示したタグがいくつもつけられており、
chillwave「Bedroom Pop」といったジャンル名のタグから、
「Flying Lotus」「Julian Casablancas」など、影響を受けたと思しきアーティスト名のタグもある。

本当にフライング・ロータスから影響を受けたのかも怪しいが、「Julian Casablancas」ってあのジュリアン・カサブランカ
ストロークスの?あんまし関係なくない?

と思ったが、このFrindly Ghost、 Souncloudでは
エレピ弾き語りによるストロークス「Someday」のカヴァーもアップしており、こちらはもう拙さも含め、素人ファンっぽさ爆発。
好きなんですね。

他にWilcoの名曲「Ashes of American Flags」のカヴァーなどもあり、

こちらはスライドギターとオルガンが効いて、いい感じのカントリーっぽさ。
ジャケ画像ちょっとイラッとしますね。



上記2つのカヴァーのようにわりとアコースティックな質感の曲も多いのだが、
このFrindly Ghostというアーティストの音楽で特に印象に残るのはやはりシンセの音それも結構、適当くさい音色である。
プリセット音色とまでは言わないが、あれっこれわりと適当に音決めちゃったんじゃないか、という感じの。

例えばこの「Summer Snow」などはイントロのコーラスからポップで、ともすれば代表曲ともなりそうな曲だが、


曲中通してずっとフヨンフヨンいってるフェイザーがかったシンセは、なんだかとっても適当な感じがする。

なんだろうな、ギターとかは結構いい感じの繊細なディレイかかってたりしたのに。



そんな感じでちょっとよくわからないFrindly Ghost(服装の方向性も定まっていない気がする)だが、

Bandcampでの1st EPにあたる、2011年クリスマスに発表した『No Sleep In The City』は
冒頭のアルバム「Friendly Ghost」と同趣向の、悪くない宅録ベッドルーム・ポップ。

まとまった作品としてはこのドリーミー路線で行くようだ。



ジャケットもこのオシャレな感じの方がいいのではないだろうか、と思うが、

アルバム『Friendly Ghost』の冴えない手書きジャケットが目にとまり、結局この記事を書くまでに至っているので、
あえて冴えない路線で個性を推していくべきなのかもしれない。


少なくともこの記事を書き終えてしばらくは、このアーティスト写真が焼きついて離れなさそうである。




2012年11月15日木曜日

このブログについて

その日見つけた音楽を手短に紹介していきます。

気になったものをパッと拾うので、ジャンルもバラバラ、
「すごくカッコイイ!」とか「シーンにとって重要」とかよりも
「コレなんかおもしろいな」ぐらいのが中心になると思います。