2014年6月17日火曜日

『Katayama Nightmare』リリース前・緊急インタビュー



タイ在住の日本人ビートメイカーとして、またジューク × ヒップホップのコラボレーションで各所で大きな反響を呼んだ『160or80』 のオーガナイザーとしても知られる、trinitiytiny(通称ちゃんゆー)氏。

氏が主催するThailand Book Storeレーベルからの第1弾リリースとなった『160or80』、そしてtrinitytiny氏の変名・DJWAXEDによる、先頃リリースされたばかりのソロ作『DJWAXED is shaved god hygienist』

この2作に続く、レーベル第3弾がきたる6月18日にリリースされます。


しかし、この作品は制作アーティストが現時点(本稿執筆時。6月17日深夜)では発表されていません。公開されているのは『Katayama Nightmare』という衝撃のタイトルと曲目リスト、そして印象的なアートワークだけ。



『Katayama Nightmare』というタイトルはやはり、あの長きにわたって世間を賑わせた「PC遠隔操作事件」の片山祐輔容疑者からインスパイアされたものなのでしょうか…?

trinitytiny氏によるこの謎のアーティストへのショートインタビューがtwitter上で公開されています。




さながら「PC遠隔操作事件」そのもののように、謎が謎を呼び、疑惑が渦巻くばかりの本作。

明日のリリースが待ちきれずに、少しでも謎の解明に近づくべく、レーベル主催者であるtrinitytiny氏と、そして氏を介して、謎に包まれたアーティストご本人にも急遽インタビューをさせて頂きました!


今回幸いにもこのインタビューが実現できたのですが、「実はインタビュー前に正体を教えてもらってる/先行で作品を聴かせてもらった」というようなメディア的なアレは一切なく、これを書いている今も本当に誰なのか全く知りませんし、また、音源も1曲も聴いていません。Twitter上で公開されている情報しか持っていない状態で、手探りでのインタビューです。

それに関しては今この記事を読んで頂いている皆さんと全く同じ状況なので、同じような期待や想像、「あの人かな…?それとも…?」という疑惑などを共有しながら、6月18日(あと20時間ほど!)のリリースをワクワクして待てればと思います!



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Thailand Book store第3弾作品、

『Katayama Nightmare』

リリース前緊急インタビュー

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その1. レーベル主催者・trinitytiny氏インタビュー


Q1. Thailand Book Storeレーベルの第3弾リリースとして、なぜこのアーティストの作品をリリースしようと思われたのでしょうか?

異常者だから。


Q2. 『Katayama Nightmare』という強烈なタイトルが印象的ですが、レーベル主催者から見て本作のタイトルと音楽性に関連性はありますか?

憑依して作ったらしいのでこれは片山の音楽そのものですよ?関連性もなにもありませんよ。本人です。


Q3. 本作はシーンを揺るがすようなエポックメイキングな作品でしょうか?それとも一人の作家のパーソナルな作品でしょうか?

異常な人には刺さるんじゃないでしょうか。凄いから


Q4. Thailand Book Storeにレーベルとしてのコンセプトはありますか?リリースする作品に共通するものがあるとしたらどのような点でしょうか。

異常者、変な人、
変な音楽、意地悪な人、つらめな人、犯罪者、グレー系
なに考えてるかわからない人などです。
普通の人でただただ作品が売れそうな人も探してます。


Q5. Thailand Book Storeの今後のリリース・活動の予定などありましたら教えたら教えてください。

第四弾が近々出ます!が、
また異常者のユニットです。


@triritytiny info 

@trinitytiny1 : soundcloud , twitter , bandcamp
Thailand Book Store : Bandcamp



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その2. アーティスト(現在正体不明)インタビュー



Q1. 本稿時点では謎のアーティストとして、全く正体も知らず、音源も聴けていない状態でのインタビューとなります。衝撃的なタイトルが冠された本作のコンセプトについて、改めて教えてください。

最初は「とあるカップルを呪い殺す」というコンセプトでEPを作ろうと思ったのですが、精神的におかしくなりそうですし、誰も聴かないと思ったので断念しました。
本作のコンセプトは、タイトルの通り『片山の悪夢』です。片山祐輔被告が今までみた悪夢、これからも見るであろう悪夢を想像して、このEPを作りました。



Q2. このタイトルと本作の音楽性に関連する部分はありますか?ご自身では、本作を「遠隔操作事件を直接的に音楽で表現した」内容だと思われますか?

本作は遠隔操作事件を音楽で表現したのではなく、片山祐輔被告を自分に憑依させ、片山被告の内面をビートに変換させるという実験です。ビートを作っている時間は片山被告になりきりました。



Q3. 本作の制作にかかった期間、使用した機材、また製作中の印象的なエピソードなどありましたら教えてください。

制作期間は10日間ぐらいだと思います。使用機材はSP-404、シンセサイザー、デジタルMTRです。拾ったお金で買いました。日々楽しいことがたくさんあるので、気持ちを『Katayama Nightmare』に切り替える事に難儀しました。制作期間のほとんどは気持ちを作る時間に使いました。



Q4. まとまった作品は今作が初めてとのことですが、それがThailand Book Storeレーベルからのリリースとなったのはなぜですか?『160or80』など、Thailand Book Storeの過去作品から刺激を受ける部分もあったのでしょうか?

まとまった作品は今回が初めてではありません。いろいろな名義でいろいろ出しています。リリースすることになったのは、単純にThailand Book Storeレーベルから依頼が来たからです。160or80は大好きな作品です。刺激をたくさんもらいました。



Q5.今後の作品/制作のご予定、計画などありましたら教えてください。

今後の予定も計画も特にありません。これからもアホなことをやるので笑ってほしいです。今回は本気ですが…


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いかがでしたでしょうか?trinitytiny氏のレーベルオーナーとしてブレのない小気味よい答え、
そしてアーティストご本人の回答は一問目からヤバくて最高ですね…

ここまで記事を書き進めて今は朝の5時、上にも書いたとおり、早ければあと20時間ほどで作品とアーティストの正体が発表されます。

そのため1日だけしか持たないインタビューになることは最初に覚悟していたのですが、これは嬉しい誤算で、お2人の素晴らしい回答のおかげで、作品がリリースされた後も充分にアーカイブとして読めるインタビューになりそうと思います。



では最後に改めて。『Katayama Nightmare』のリリースは2014年6月18日、Thailand Book StoreレーベルのBandcampページ上で公開されます。
https://thailandbookstore.bandcamp.com/

先着200名はフリーダウンロードも可能とのことですので、ご希望の方はtrinitytiny氏のtwitterなどで逐一続報をチェックして待たれるのがいいと思います!

この作品と、謎のアーティスト、そしてThailand Book Storeレーベルの今後の活動が楽しみです。

この記事は作品とアーティストが発表され次第、また追記していきたいと思います。




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6・18 追記

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はい!ということで明けて6月18日に予定通り作品が公開されました。誰なのかわからないままにインタビューしていた謎のアーティストの正体は、森光光子さんでした!



森光氏は以前から機会があればインタビューさせて頂きたかった人なのですが、こんな形で、自分でも知らない間にインタビューすることになるとは…!






@森光光子 info





本当に誰か知らないままインタビューしてたのですが、最後のこれからもアホなことをやるので笑ってほしい」という答え、これはSQUIDS magazineのポッセカットWannabe’s Delight(*)における印象的な森光光子氏ヴァースにも織り込まれていた言葉なので、「もしかして…?」と感づいていた方もいるかもしれません。

*= SQUIDS magazine主催のイベント「amazon」の入場特典として配布された楽曲。現在はフリーダウンロード可能

おそらくご本人による印象的なジャケットもヒントになっていたと思います。森光さんならアートワーク関連でも質問したいこといっぱいあったな…


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『Katayama Nightmare』は4曲収録。Bandcampでは2曲が視聴可能で、現在はname your price。先着200名はフリーでのダウンロードも可能とのこと。


1曲目:「Katayama Nightmare Part 1」

TRAP的なドラムに、左右に飛び交うノイジーなシンセと変調されたボイス・サンプルが渦を巻く楽曲。
片山祐輔被告を自分に憑依させ、片山被告の内面をビートに変換させる」「制作期間のほとんどは気持ちを作る時間に使いました」との回答を読んでから聴くとほんとに悪夢っぽく聴こえて、制作過程のドキュメンタリーとか見たくなりますね…。

森光氏のsoudcloudでも聴けるこうしたTRAP以降のビート曲はDAWで作られているものだと勝手に想像してたのですが、過去作も全てハードサンプラーSP-404をメインに制作されたのでしょうか?


2曲目:「Katayama Nightmare Part 2」

レーベル主催者trinitytiny氏の変名・DJWAXEDとのコラボ楽曲。こちらは全編さらに歪んだノイズまみれ。Katayama Nightmare…。
ドラムパターンも一定ではなく、すわゴルジェ、かと思うようなピッチダウンしたタムも乱打されます。

以前Lan氏のブログでのtrinitytiny氏インタビューではNIのMaschineで楽曲制作されていると発言されていましたが、
森光氏がサンプラーで組んだ素材にWAXED氏が肉付けしたのか、それともWAXED氏のシンセなどを森光氏がサンプラーに取り込んで使用したのか、制作工程も気になるところです(実際はもっと入り組んだ、相互作用的なコラボレーションだと思いますが)


3曲目「Katayama Nightmare Part3 」

少し聴きやすい方向(現世?)に回帰。このEP中で最もポップな楽曲といえるかもしれません。
そういえば本EPには「electronic」「bass」「experimental」から「blackmetal」まで様々なタグが付けられていますが森光さんの代名詞といえる「twerk」がない


やはりこの作品は森光光子氏の作品ではなく、片山祐輔被告の作品として聴くべきなのでしょうか


4曲目:「サイコパス」

最後を飾る楽曲。ここまで3曲は「Katayama Nightmare part 1」「Part 2」「Part 3」のシリーズ連作でしたが、この最終曲だけ「サイコパス」。この曲名なのにすごく優しい響きなのが逆に怖い…。

1分50秒と短く、ビートも無しなアウトロ的な作品。「ツインピークスのテーマ」を強く想起させる、ノスタルジックなシンセと、霧のように消える浮かんでは消える高音の響きが美しいです。



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はい!

そんなわけでなんか結局レビューまでワーッと書いてしまいましたが、1つの告知ツイートがきっかけで夜中にいきなりインタビューを申し込んで、即OK頂き、やりとり含めて数時間で記事が完成、12時間後にはアップ、そして作品が公開され、また数時間でレビューを書いて、という感じ、なんというかインターネットっぽくて個人的にはとても楽しかったです。


最大限にご協力頂いた森光光子氏とtrinitytiny氏に、本当に感謝します。

Thailand Book Storeレーベルからリリースされた『Katayama Nightmare』、もしかしたら今年最も狂ったコンセプト・アルバムかもしれませんが、是非ぜひ聴いてみてください!