2014年7月29日火曜日

【和訳】noiseyによる #FoFoFadi の紹介とインタビュー

こんにちは!さて、いきなりなのですが皆さんは"FoFoFadI"というのをご存知でしょうか。

ある人はSoundcloudにて、謎の動物キャラのアーティストたちがアップしたR&B Remixで「フォフォファディ…」という印象的なボイスタグを聴いたことがあるかもしれませんし、またあるいは
TwitterやFacebookなどのSNSで「#FoFoFadi」という不思議なハッシュタグを目にしていた人もいるかもしれません。

「"FoFoFadi"ってたまに見聞きするけど何なの?」と思ってた人もいるかと思います。

この"FoFoFadi"というのは海外の数名のビートメイカー/プロデューサーたちのクルーです。


彼らは皆それぞれ動物を冠した名前を名乗っています。そうして正体を隠しているのですが、既に一部では名のあるプロデューサーの変名である場合も多いようです。
彼らは他にもいくつかの設定を共有しています。

"FoFoFadi"のメンバーが共有する設定については(上記に挙げたものとも重複しますが)

①アーティスト名に必ず動物の名称が入っている。

②アーティスト名が、頭文字が同じ2単語。
Cashmere Cat、Trippy Turtle、Girly Gorilla、...など)


絶対条件としては上記2つですが、他にも概ね共通する傾向としては

③エモいコード進行のシンセ+Trap以降の重いビートを主体に、R&BやHipHopのRemixを作る
④他の名義でも活動しているミュージシャンの変名である

というのもあるかな~と個人的には思っています。
例えばこの"FoFoFadi"ムーブメントを牽引する存在でもある「Trippy Turtle」の楽曲でいうと



条件①②はTrippy Turtleという名前でクリアしています。


③に関しては、この楽曲はTrey Songzの同名曲のリミックスですし、音楽的な特徴に関してもわかりやすいと思います。
④は、Trippy Turtleは本国ノルウェーではポップシンガーとしてのキャリアもある、有名なアーティストの変名です。
もう顔出しもバンバンしてるので検索すればだいたい正体もわかるかと思うのですが、一応本人が公式にそう言及したわけではない(?)と思うので、ここに書くのは何だか憚られるので止めておきます。


ただ条件③④はあくまで「現時点ではそういう傾向」というだけで例外もあります。

③はそもそもCashmere CatやTrippy Turtleら、先行して活躍するメンバーの曲の印象に引っ張られているだけかなとも思いますし、まだ主要メンバーの曲も出揃っていないので何とも言えません…。

④も今はまだ多くのメンバーが正体不明ですので、これも現時点では何とも。
ただ国内外問わず、この"FoFoFadi"ムーブメントを追いかけている人たちには、ふざけた名前とキャラクターに隠れた彼らの正体を解き明かしてやろうと楽しむ人も多く、「誰かの変名である」というのはある種の前提というか、共通認識にはなっていると思います。


しかしまだまだ不明点が多い"FoFoFadi"。
本人たちだけでもまだまだ謎だらけなのに、最近では公式メンバーではないのに勝手に"FoFoFadi"を自称するフォロワーたちや、類似したコンセプトを掲げた変名ミュージシャンもどんどん増えて、ますます混乱を呼んでいます。


そうした"FoFoFadi"クルーとそのムーブメントについて、UKの音楽メディアnoiseyが取材をしてくれています!

MEET THE CARTOON ANIMALS MAKING DIPLO-APPROVED POP MUSIC

"FoFoFadi"について珍しく本人たちのキチンとした声明がとれたこと、またPC MusicSadboysなど日本からではイマイチ動向がわかりにくい同世代の別シーンたちについても少し触れてくれていることなど、おもしろい記事となっているので翻訳してみました!

(勝手にやったんですけどnoiseyって同系メディアのVICEの日本語版があるしこれは怒られそうな気がするぞ)

拙い翻訳で読みにくいとは思いますが、"FoFoFadi"やその周辺については日本語記事がとても少ないので、こうしたシーンの同時代的なおもしろみとかが一部分でも伝われば嬉しいなと思います。

(翻訳に際してはいつもお世話になっているぺちこさん @mpecci515 に今回もご協力頂きました)

前置きが長くなってしまいましたがこの下からが記事の翻訳部分となります!ではお楽しみください!的な!怒られたくない!






MEET THE CARTOON ANIMALS MAKING DIPLO-APPROVED POP MUSIC

By Patrick Mills







Music, like any art form, finds inspiration in strange places. Yeezus was inspired by the architectural work of Swiss-French pioneer Le Corbuiser, Macaulay Culkin must have seen something relevant inside the deep-pan Hawaiian he ordered the night Lou Reed passed, and Lil Wayne has written over 102 lines about bowel movements.


音楽は(他のあらゆるアートと同様に)、ときに思わぬところから想像のきっかけを得るものだ。

例えばカニエ・ウエストの『Yeezus』は、建築家ル・コルビュジェの創作から大きなインスパイアを受けている。マコーレー・カルキンはルー・リードの逝去とハワイアン・ピザに何らかの因果の繋がりを見出したようだし(*訳注1)、また、リル・ウェインは便通に関するリリックをもう102行以上は書いている。

(*訳注1)=映画『ホーム・アローン』シリーズで有名な俳優のマコーレー・カルキンは現在、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド及びルー・リードの曲の歌詞をピザに置き換えて唄う「ザ・ピザ・アンダーグラウンド」というカバー・バンドを結成し、精力的に活動しています。



But the above are anomalies - reference points specific to each artist. In today’s world – where artists with no albums get thousands of Soundcloud plays – musicians are increasingly becoming inspired by technology, both its past and future.


上記には少し特殊な例ばかりを挙げたが、参照点はそれぞれのアーティストにより異なる。そして昨今 -アルバム1枚もリリースしていないアーティストたちが、Soudcloudで数千回の再生回数を得るのも当たり前になった昨今- では、ミュージシャンたちは過去、あるいは未来におけるテクノロジーの有り様からより多くのインスパイアを得ているようだ。




Take a look at PC Music. You don’t even need to know who the people behind it are - the name alone suggests they create music that sounds like a club night put on by the Paperclip in Windows 95. When he isn’t rapping about “getting [his] balls licked by a Zooey Deschanel look-alike”, Yung Lean ghostrides smart cars. A song exists that is literally about uploading GIFs on to Blogger.


例えば"PC Music"というクルーを見てみよう。ここでは彼らの正体がいったい何者なのか、ということなどはあまり重要ではない。このクルーはその名前だけで、あなたの脳裏にまるでWindows95のPaperclip(アシスタント・キャラクター)が創造したクラブ・ミュージックのような、奇妙な音楽を連想させるだろう。

また、Yung Leanは、彼がズーイー・デシャネルとの情事を妄想しながらラップ(*訳注2)していない日も、いつだってドアからふてぶてしく身を乗り出しながらスマートカーを乗り回しているだろう(*訳注3)。
日々Bloggerなどに投稿され続けるGIFのように、楽曲は楽曲それだけのものとしてインターネット上に存在している。


(*訳注2)=Yung Leanの楽曲「GINSENG STRIP 2002」中のリリックです。

(*訳注3)=「Ghostride」というのは、走行中の車のドアを開けて身を乗り出す危なっかしい行為。昔の暴走族の「ハコノリ」に近いのかもしれません。Yung Leanの楽曲「Yoshi City」のPVにスマートカーのドアから身を乗り出してGhostrideするシーンがあります。



Music keeps moving and as it does, the things that inspire it get stranger. The next in line in the trend of internet-led music scenes comes from a collective that, essentially, consists of Pokémon and cartoon animals.


音楽シーンの動きは常に変わり続けているし、それに伴ってインスパイアの源もどんどん奇妙になってきている。インターネットを活動の中心とする音楽シーンにおいて、いま、次のトレンドとなりつつあるのはポケモンや動物キャラクターたちで形成されたコレクティヴだ。







Led by a guy called Trippy Turtle, the first is a gang known as FoFoFadi, which sounds like one of those bizarre names people give their genitals when they don’t want to say cunt in public. Trippy Turtle’s music sounds like future sex jams – he’s owning 2020 in the same way The Weeknd owned 2010. 

「Trippy Turtle」という(まるで性器の隠語のような)名を名乗る人物も、"FoFoFadi"なるギャングの一員として知られている。さながらThe Weekndが2010年の音楽シーンを象徴していたように、Trippy Turtleは2020年の音楽シーンを象徴している。



The FoFoFadi crew is made up of a bunch of other animal-based artists: names like Girly Gorilla, Booty Beaver and Drippy Dolphin. Drippy is one of the best, creating endearing music that puts you in the strange middle ground between feeling pilled up to the eyeballs and possibly just needing an Ibuprofen and a nap. His track “Craaazy” mashes up 90s pop munchkin Aaron Carter, the Vengaboys, and machine guns.


"FoFoFaDi"クルーはそれぞれに異なる動物の名を冠したアーティストたちによって構成されている。例えばGirly GorillaBooty Beaver、それからDrippy Dolphinといったように。

Drippyの楽曲が一番わかりやすい例だろうが、彼らが作り出すかわいらしい音楽を聴くときあなたは、ドラッグでめちゃくちゃハイになったような高揚と、もう頭痛薬だけ飲んで昼寝してしまいたいような憂鬱の、奇妙な中間点にいるような気持ちになるだろう。
Drippy Dolphinの楽曲「Craaazy」は90年代のポップ・ミュージシャンAaron Carterと、The Vengaboys、それから機関銃の音とのマッシュアップだ。





Trippy has recently been signed to Mad Decent imprint Jeffrees, a suggestion that there’s a place for this sort of music outside Soundcloud. The crew are associated with Cashmere Cat, too – who makes tracks that bounce from trap-heavy basslines to the kind of music you imagine J-Pop star Kyary Pamyu Pamyu listens to while her advisors apply her makeup.

先頃、Trippy TurtleがMad DecentのサブレーベルであるJeffreesと契約したことが大々的に発表された。これは彼らのようなアーティストたちが、今後続々とSoundcloudの外へと飛び出してくるであろうことを示唆している。また、トラップのような重たいベースラインから、J-POPスターのきゃりーぱみゅぱみゅがメイク中に聴くような楽曲まで、幅広いスタイルの音楽を制作するCashmere CatもFoFoFaDiクルーの一員だ



I wanted to talk to Trippy Turtle to understand more about the scene but was told he doesn’t do interviews because he’s a turtle. Fair enough. So I spoke to an unnamed FoFoFadi board member instead.


私はこのシーンについてもっと深く知るため、Trippy Turtleにインタビューを申し込んだ。しかし彼はインタビューに答えることができないという。亀だから。それでは仕方ない。


ただ、その代わりにFoFoFadiクルーの名も無き一員、だという人物が匿名でインタビューに答えてくれた。



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Noisey: Hi unnamed person on the internet. What is the FoFoFadi and what does it mean?


こんにちは、インターネットの匿名希望さん。FoFoFaDiというのは何?どういう意味があるの?


FoFoFadi is a collective of creative animals working together on artistic projects. What it means is a philosophical question.


FoFoFaDiは"クリエイティヴな動物たち"の集団なんだ。いっしょにアーティスティックなプロジェクトに取り組んでいる。「FoFoFadiってどういう意味?」というのは…それは哲学的な質問になってしまうね。



Where could this movement end up?


君たちの最終目標は何なのかな?


World peace.


世界平和。



Who are the prominent members of the crew?


クルーの主要メンバーを挙げてくれる?


Artists scheduled for musical releases at the moment are: Trippy Turtle - Cashmere Cat - Drippy Dolphin - Booty Beaver - Girly Gorilla - Faded Fox - Wasted Whale - Epileptic Elephant and Disco Duck.

The FoFoFadi crew are perhaps the biggest musical crew with animal names - but they’re not alone. With their rise has come an offshoot that call themselves the Pokecrew; a similar concept but rather than basing themselves on animals, they keep the late 90s Gameboy dream alive and create through the eyes of Pokémon. Led by artists like Bubbly Bulbasaur and Dope Diglett, the movement is still in its infancy but is every bit as intriguing as FoFoFadi.

音楽的なリリースが予定されてるメンバーは、 Trippy TurtleCashmere CatDrippy DolphinBooty BeaverGirly GorillaFaded FoxWasted WhaleEpileptic Elephant、それとDisco Duckだね。


"FoFoFadi"は「動物の音楽家たちのクルー」としては一番大きいかもしれないけど、でもこういうのって僕らだけじゃないんだよ。

例えば"Pokecrew"という、分派のような存在も生まれている。コンセプトは僕らとよく似ているけど、彼らは動物じゃなく、ポケモンのキャラクターになりきることで、90年代後半のゲームボーイ時代の世界観を復活させてるんだよね。中心的なメンバーにはBubbly Bulbasaur(フシギダネ)やDope Diglett(ディグダ)がいる。彼らの活動はまだ始まったばかりだけど、"FoFoFadi"クルーもみんな、彼らの一挙手一投足には注目しているよ。








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One of pertinent things about the FoFoFadi movement is that the influence of cartoons, video games, and Japanese culture on today’s pop soundscape cannot be understated. Ryan Hemsworth – a self confessed Pokemon addict – has said his gigs are filled with “music nerds, people who are obsessed with video games and Pokemon, hot girls, and gay dudes”. Both Hemsworth and British producer SOPHIE are collaborating with the aforementioned Kyary Pamyu Pamyu. These collectives feel like the next step on from this.


FoFoFaDiについて話すならば、コミック・TVゲーム・そして日本のポップ・カルチャーからの影響は無視できない。「重度のポケモン・オタク」であると自他共に認めるRyan Hemsworthによれば、彼がライブする際のフロアは"音楽オタク、ビデオゲームやポケモンを愛していて、それと同じぐらいにかわいい女の子が大好きな奴ら、そしてゲイの男の子たち"、で常に一杯だそうだ
そしてそのHemsworthと、UKのプロデューサーSOPHIEは、前述のきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボレーションも進行中であるという。彼らもまた同じようなポイントから、さらに次なる一歩を踏みだそうとしているのだ。


The interesting thing about the FoFoFadi movement - and the other polarising scenes that've popped up over the past year, (the Sadboys and PC Music) - is that they inhabit their own universe. This is a good thing and important to their longevity. Pop music should be an escape from reality - whether that be Miley Cyrus straddling a giant dog with laser eyes, Katy Perry shooting whipped cream from her tits or, now, an animated turtle doing a remix of Ludacris. Pop stars are characters, and while we’re not saying that the FoFoFadi are quite up to Bowie or Prince levels of enigma, there’s a certain playfulness that lays within their heart.


興味深いのは、この"FoFoFaDi"クルー、そして同じくここ数年で脚光を浴びるようになったいくつかのコレクティヴ(例えばYung Leanを擁するSadboysや、PC Music)に共通して言えるのは、彼らは自分たちだけの世界観を造り上げ、その中に暮らしていることだ。これはおもしろい特徴だし、おそらくは彼らのキャリアを長続きさせる要因にもなるだろう。
ポップ・ミュージックはつまらない現実からの逃避でなければならない。マイリー・サイラスは自身のライブにレーザーで目の光る巨大な犬を登場させ、また同じく巨大なホット・ドッグに跨りながら熱唱する。ケイティ・ペリーは自身の両胸から嬉々として生クリームを噴出させる。そして今は、亀のイラストのキャラクターがせっせと動いてLudacrisのRemixを造っている。
ポップスターとはキャラクターなのだ。"FoFoFadi"がデヴィッド・ボウイやプリンスと同等の象徴性を持っているとは言いがたいだろうが、悪ふざけと遊び心ならば彼らだって負けてはいない。



This music is not for everyone – and at certain times I can’t bring myself to listen to yet another gunshot / Spice Girls mash-up. But at the end of the day I would rather spend five minutes with a cartoon beatmaker called Epileptic Elephant than have to hear a Clean Bandit song ever again. And, if nothing else, they’re having fun. Which is much more than you can say for alt-J or whatever other bunch of ‘real musicians’ you want to choose in 2014.

彼らの音楽は万人向けではないだろう。正直に言って、私も「銃声まみれのスパイス・ガールズRemix」なんてもう聴きたくないと思うときもある。それでもやはり、一日の終わりに、5分だけ落ち着いて音楽を聴くとして、毎日どこに行っても流れているClean Bandit(UKの若手バンド
)の曲をまた繰り返し聴くよりは、Epileptic Elephantなどと名乗る動物キャラのビートメイカーを聴く方がいいと思ってしまう。
そして、なんといっても彼らはふざけた遊び心を持ち、楽しんでいる。それだけでも、この2014年に、Alt-J(UKの若手バンド)や、その他大勢の「リアルなミュージシャン」たちよりも、"FoFoFadi"の音楽の方を好んで聴く理由の一つにはなるだろう。