2013年5月12日日曜日

tofubeatsの隠れた名曲「KAGE」と「徳利からの手紙」




tofubeatsの記念すべき初アルバム『lost decade』。

iTunes tofubeats 「lost decade」


そして、そのアウトテイク集として発表された『lost decade (outtakes)』。

このアウトテイク集に収録された「KAGE demo」がアルバム本編収録曲にも負けない名曲でした。

しかしこの曲について触れるならば、
まずこの曲が生まれるインスパイア源となったエピソードについて書かなければなりません。


時系列で見ていくと


それは半年ほど前、tofubeatsの盟友であるオカダダのツイートで言及されていました。


この「いい話」というのは徳利(@leetok)さんがツイートした過去のエピソード。
その元ツイートは現在、見られなくなっていますが、それらツイートを凝縮した「徳利からの手紙」という楽曲内のリリックとしてそのまま聴くことができます。

leetok  「徳利からの手紙」



0:12からの、「中学受験で…」から始まるエピソード。

ここでは「徳利からの手紙」については(語りだすと絶対長くなるので)置いておきますが、
もしこの曲を聴いたことが無ければぜひ一度、聴いていただきたい名曲です。(現在もこちらのリンクからフリーダウンロードが可能です)


続くこのツイートに貼られていたのは、まさにその時のtofubeatsとオカダダのSkypeでのチャットのスクリーンショット。
 


そして

ここまでが2012年10月のやりとり。

このやり取りはここで一旦終了しますが、


この後tofubeatsが(上記の楽曲とはまた別に)自身のサウンドクラウドにて
「徳利からの手紙」をリミックスしたものを発表。

tofubeats 「徳利からの手紙(social distance mix) tofubeats remix」

(フリーダウンロード可)


冒頭から、まさにあの思い出の話がtofubeatsのEDITによりスウィートな記憶として改竄され、

ドリーミーなシンセとともにリピートされます。「楽曲のリミックス」という概念を超えて、1人の人間の過去の思い出を書き換えてしまった、これもまた優しい良リミックスでした。

(ちなみにこれ↓は同曲の「人生の改竄」のまた別の一例)

Decayxodus a.k.a DKXO 「徳利からの手紙 ~GANJA REMIX~」
(フリーダウンロードLINKあり)

  



それから半年の時が経ち


そうこうしてる間に時は流れ、2013年4月、晴れてtofueatsの初アルバム「Lost Decade」の発売直前。Twitterなどでの期待も最高潮に高まっていたそのとき、なんとtofubeatsが急遽アルバムのアウトテイク集をname your priceにて公開。その7曲入りアウトテイク集『Lost Decade Outtakes』の、最終曲として収録されていたのが「KAGE」でした。

そしてこの発表直後、オカダダがしたのがこのツイート。


2012年10月のやりとりで言及されていた楽曲がまさにこの「KAGE」なのです。
ここまでのエピソードを踏まえて、改めて「KAGE」の視聴リンクを。
【歌詞】

悲しい時や嬉しい時をかみしめてつい縛られちゃうね心の中をのぞきみられてドキリとしたけど何もない
出て行くときに目を見て言った暗くなる前には 帰るよ
ああ 君がここにいるはずなどないけどまだ影を探すああ もう誰も君のこと思い出せないけど影はうつる
悲しい時や嬉しい時も過ぎてしまえば 思い出だけど覚えてたこと 全部忘て最後は何も残らない
ふとしたことで誰かのことを悲しませても いつかは 許すよ
ああ 君がここにいるはずなどないけどまだ影を探すああ もう誰も君のこと知らないけど 僕は覚えているよ
ああ 雨が降るああ 君の手を
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

クリック音のように「カッ、カッ」とだけ鳴るスネア、
エレピのシンプルなコード弾き、そして薄くオートチューンがかけられたtofubeats自身の歌。弾き語りのような音像で始まります。Bメロに入るとコードに低音鍵の響きが加わります。足元を踏みしめて、一歩踏み出す決意をしたかのように。少しだけ緊張して、心臓の鼓動が速まっていく、あのときの感じ。そしてそこから、コード進行もドラマチックに動き始めます。

なぜ本編アルバム「Lost Decade」に収録されなかったか
不思議に思うような名曲。




アウトテイク集の最終曲である「KAGE」の存在


ここからは憶測なのですが

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tofubeats自身はアルバムについてのインタビューで各媒体で

「アルバム」というパッケージ、体裁にこだわったと語っています。
“SO WHAT!?”を作った理由としては、17曲目の“SO WHAT!?(EXTENDED FULL POWER DIGITAL MIX!!)”を入れたくて。実はそこ起点で作り始めたんです。
――これが最後に入ってるの、いいですよね。これが“LOST DECADE”の後に始まると、すごくボーナストラック感がある。 
tofubeats そうなんですよ。僕としては、それでJ-POP感みたいなのを表現してる(笑)。ボーナストラックみたいな曲って、今だったら別で出したりsoundcloudにアップしたらいいじゃないですか? それをあえて入れることによって急激に僕の中でアルバム感が出る。そういうのに憧れがあって。やっぱアルバムでやれることって意外にそういうことじゃないですか? “LOST DECADE”でめちゃくちゃきれいに終わるのに、ボートラを入れてしまうと、急に全部が軽薄になるんですよ。それがすごいよくて。
(引用:「NEXUS アーティストインタビュー tofubeats」) 
ボーナストラックの扱いも含めて、これだけアルバムというパッケージにこだわったtofubeatsが、
発売と同日にアウトテイク集をリリースし、その聴かれ方に意味を持たせていないとは思えません。少し前まで、まだシングル文化が華やかだった頃では、雑誌などでのミュージシャンのインタビューで

-なんでこんないい曲をシングルにせんかったん?
「いや、この曲はB面でこそ映える曲やと思ったから」
という発言が時折見られたものでしたが、B面で輝いてファンの記憶にいつまでも残る楽曲、そういった役割を、最終曲として収録された「KAGE」に持たせたのではないでしょうか。

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最後の部分は邪推かもしれませんが、この「KAGE」が素晴らしい曲であることには変わりありません。

Bandcampではname your price(ご自由に値段を決めてください)でリリースされていますので、
ぜひ一度、できればアルバム本編「lost decade」(こちらもフル視聴できます)と
合わせて聴いてみてください。


(Bandcampの使い方に馴染みが無い人には、
tofubeats自身がわかりやすく書いたダウンロードの仕方もありますのでぜひ読んでみてください)

iTunes tofubeats 「lost deacde」





追記

2013/5/13の徳利さんのツイートを追加しました。




2013年4月20日土曜日

Contact Lensのアルバム『MEDIAFIRE KINGDOM』



「Vaporwave」は、玉石混交、というよりはほとんどがジャンクなので、長続きしません(でした)が、「Vaporwave」のテイストを受け継いだ、ジャンクながらいい音楽も続々誕生しています。
このContact Lensのアルバム『Mediafire Kingdom』もその一つ。

Vaporwaveのタームである意味不明な日本語タイトルこそ無いものの、アーティスト名からも、アルバム名からも、さも適当な匂いがプンプンします。



フリーダウンロード作品として発表された本作は、なんと35曲を収録。さぞかし大長編かと思いきや、ほとんどの曲は展開も少ない、シンプルな1ループ。1分台か、長くても2分台の曲しかありません。


楽曲のトーンも統一されており、ドラムマシンTR-808的なドラムの音色と、アナログな太いシンセの音。
このシンセの音が、何の工夫も無いような音なのですが、太くて気持ち良い音。この音で、シンプルなフレーズを爪弾かれると気持ちよーくて、ダラーと聴いてるうちに、アルバムはすぐに終わってしまいます。

スパイス的に時折挿入される、Vaporwave的な80年代サンプリングもシンセの音とマッチしており、違和感なく溶け込みます。


「音も展開も変化がない」「シンプルかつちょっとダサいフレーズの繰り返し」と、悪い面はいくつも挙げられるのですが、なぜか「それが最高なんじゃん」と言えてしまうアルバム。
「最高の音楽」や「人生の1枚」ではないですが、なぜか憎めない愛嬌があり、気付くとよく聴いていたアルバムでした。

こちらの公式ページの下部「DOWNLOAD HERE =」のリンクからフリーダウンロードできます。

2012年11月27日火曜日

KRTSと、レーベルProject: Mooncircle




ベルリンのレーベル、Project: MooncircleからリリースされたKRTSのアルバム。




Bandcampでは2曲目「Fire」しか試聴できなかった本作ですが、
新たにこの度「Regret To Retreat」のPVが公開されました。



アルバムタイトルが「The Dread Of An Unknown Evil」で、
PVには冒頭からスパイキー・ヘアのかわいらしい少女が。

すわ、もしやこの女性がKRTSなのか、と画像検索をしたところ






Devilでした。


しかしながら楽曲は美しく、ベルのように響く鍵盤の音が印象的。




Project: MooncircleはTa-KUとPavel DovgalのスプリットアルバムやRobot Kochの諸作の他、
KidkanevilとDaisuke Tanabeのコラボ作『Kidsuke』、
現在日本在住のビートメイカーSubmerseのアルバムもリリースするなどしています。



とか書きながらSubmerseのアルバム未チェックだったので、今初めて聴いたのですが、 これむっちゃかっこいいですね…。



コンピレーション「The Moon Comes Closer」には
上記のような面々に加え、Kan SanoやHimuro Yoshiteruらも参加。



「厳しいモスクワから、月へ逃れたいと夢見た少女、Jinna Morochaの物語」というテーマの元、
様々なビートメイカーが楽曲を提供しています。



”これは月に飛んでいく幻想を抱いたロシア人女性 Jinna Morocha の物語です。 
このロシア人が最初にはっきりと月に関する夢を見た時、彼女はまだ少女で、モスクワが厳しい時期と向き合っていた頃でした。 
この鮮明なビジョンは彼女の心にとどまり、やがて『どうしたら月にいけるのだろう』と考える様になりました。 
その後現在ドイツに住んでいる Jinna が私たちにコンタクトを取って発した『月に連れて行って』という質問に私たちはためらいました。 
私たちは『それは出来ないけど頭の中でなら君を月まで運んでいくことは出来るよ、君のビジョンにサウンドトラックをつけるから、目を閉じて、そこで旅をしたらいい』と答えました。
この言葉が始まりでした。 
The Moon Comes Closer は頭の中で描く月への旅のサウンドトラックです ”

Young Wonder - To You (Ambassadeurs Remix)




UK、ブライトンのAmbassadeursが
Young Wonderの「To You」をチルウェイブにリミックス。

フリーダウンロードで公開されている。




Young Wonderはアイスランドの男女デュオ。
原曲PV ↓



このPVでもハッキリ示されているように
この曲は葬送歌、鎮魂歌だと思うんだけれど、

ヴォーカルがスクリューされたことによりエモさが増していて、
この歌詞 ↓ がより印象的に響く。

"can you get to sleep tonight?
i think the pain in my ribs has subsided,
and then i will close my eyes.

see you, see you in the next life.


run wild, voice loud, i'm screaming and screaming.
dress wet, our minds set, we're dreaming and dreaming.
fingers go numb, i've lost all feeling.

Where does this take me i'm praying, kneeling.

....i'll see you again"



また、原曲でイントロから印象的に響くヴァイオリンの短いフレーズが、
同じくピッチを落としたことで、こちらはテープ逆回転のように聴こえる。



フランスのDiscodeineによるPara Oneリミックス



先日PVも公開されたPara Oneの「When The Night」





この曲をリミックスしてて知ったDiscodeinがかっこよかった。




フランスの2人組ユニットで、名前のとおりのTHEディスコ感。
でも「ディスコ」+「コデイン」なのかな。コデインのドロドロ感は全然無いですね。



2010年にDFAからリリースした12" 「Synchronise」は、
ジャーヴィス・コッカーがヴォーカル参加ってのもあって結構ヒットしたっぽい。



この曲も収録したアルバム『Discodeine』が2011年にフランスのレーベルPscentからリリースされてる。
これはレーベルの公式サイトで全曲試聴できるです。





2012年11月18日日曜日

Erik griswoldのプリペアド・ピアノ


作曲家・演奏家Erik Griswoldについて少し書きたいと思う。

プリペアド・ピアノを主な楽器とするErik Griswoldは、オーストラリア在住のアメリカ人。

彼の音楽はジャンルとしては「現代音楽」に分類されるが、

「Guaguanco」などの曲で聴かれるパーカッシブな演奏は、
ガムランのアンサンブルにも喩えられるなど、ソロのピアノ演奏でも非常にリズミック。

普段ビート音楽に親しんでいる人なら、一聴して「踊れる」と判断すると思う。


ちなみに本人はこの曲について
「キューバの”Guaguanco”のリズムを僕なりに解釈したものだ」
と述べている。

”Guaguanco”については次回以降のエントリーで取り上げたい。




もう1曲、こちらは「Wallpaper Music 1」。

この曲名からはブライアン・イーノの提唱した「家具の音楽」が連想されるが、
実際の楽曲は細かな不協和音が絶えず鳴り続け、不穏な緊張感を纏っている。
とても「アンビエント・ミュージック」とは呼べそうにない。

この「Wallpaper Music」シリーズで、Erikは現在までにアルバム3枚をリリースしており、
現在の彼の活動のメインになっていると思われる。

「Wallpaper musicでは、僕はピアノの全ての弦に仕掛け(プリペア)を施す。
ゴムやボルト、紙なんかも使ってね。そうやって過激な形でピアノを”再調律”するんだ」





彼の作曲家としての顔も見てみよう。



この動画は彼の作曲した「In The Dream, Part 1」という楽曲を、6人の打楽器奏者が合奏するもの。

ステージ中心の2人を軸に、各演奏者のパートが入れ替わり、強弱のコントラストが緊張感を高めていく。

このうち1人はメルボルンで活動する日本人パーカッショニスト、オモテノゾミ。
彼女が叩いてるデッカいバネみたいなの、あれ、何なんだろう。




こちらは女性打楽器奏者、Vanessa Tomlinsonとのコラボレーション作品。

大きな振り子からこぼれおちる砂粒を様々な陶器や銅板、紙や打楽器で受け止め、
その配置によってメロディーを奏でていく。



このVanessa Tomlinsonとは
「Clocked Out Duo」名義としての演奏活動も10年以上継続しており、
現在までに3枚のCDもリリース。

インプロヴィゼーションの要素も強いユニットで、おもしろい映像が多数残されている。



カリ、コリと引っ掻くようなプリペアド・ピアノの音が耳に残る。
3:30からの、リズムが複雑さを増す瞬間が素晴らしい。




2012年来日時の六本木スーパーデラックスでのライブ。
Erikはベース・メロディカを吹き、Vanessaは、2本のロープを操りシンバルなどを鳴らしている。

何だこれ。




上の演奏と同趣向の作品になるのか、

2011年には様々な打楽器演奏の実験を行う
「Speak Percussion」プロジェクトにも作曲家として作品を提供。


こちらも6人の打楽器奏者のステイックにはロープが結ばれ、
またそれぞれのロープは中央で繋がっており、演奏と視覚的にも連動している。







また、本人の公式ウェブサイトでは、
トップページを開くと簡素なオルゴール音が流れるようになっている。

http://www.erikgriswold.org/


この「From Heaven Above」と名付けられた美しいオルゴール曲には
”Altered and processed music box”との注釈がつけられている。


これは単に”経年劣化したオルゴール”というニュアンスなのか、
それとも”手を加えられたオルゴール”という意味か。

もし後者ならば、「プリペアド・オルゴール」とでもいうような音楽表現が存在するのだろうか?






このように、駆け足でザッと観ただけでも様々な活動を行う現代音楽家、Erik Griwold。

端的に言えばおもしろおじさんである。


彼のことはSoundcloudで偶然発見したのだが、その時点で彼のSouncloudアカウントのフォロワーは14人。
その1ヶ月前に公開されていた「Wallpaper Music 1」の再生回数はわずか1回だった。
(というかその1回って、本人によるテスト再生では…?)


演奏家としての活動も長く、作曲家としても様々な作品を手がけるErik Griswold、決して無名の人ではないと思うのだが…。
オーストラリアの彼の周辺シーンでは、Soundcloudの利用が一般的ではないのだろうか?



今後、彼の周辺のシーンも取り上げたいと考えているので、、そのあたりにも触れていきたいと思う。