2015年6月13日土曜日

【KOITAMAさんインタビュー】ラップ、ビートメイク、DJ…。様々な音楽制作や、独特なラップスタイル、そして“高橋くん”について



東京・埼玉を中心に活動するKOITAMAさんというアーティストがいます。

「ラッパー」とか「DJ」でなく、「アーティスト」と何だかボンヤリした言い方になってしまうのは、KOITAMAさんの多岐にわたる制作活動を一言で表すのがなかなか難しいからです。

人によっては、KOITAMAさんのことを個性的な「ラッパー」として知っているでしょうし、また別の人は、MPC色の強い太い鳴りのヒップホップを作る「ビートメイカー」だと認識しているかもしれません。

あるいは、韓国や東南アジア、チリやフィンランドまで、各国ご当地のヒップホップをMIXする「DJ」として記憶している人もいると思います。


私が初めてKOITAMAさんを知ったのはラッパーとして。
2013年夏にリリースされた楽曲、DKXOさんをfeat.した「PLAYING」のPVでした。


このPVは北陸を代表する名瀑、
富山県の“称名滝”で撮影されています


Hi-Hi-Whoopeeでの記事にて荻原アズサさんが書かれていた、「舌足らずでけれども挑発的なほど丁寧なラップ」という表現がピッタリなゆっくりとしたフロウは、それまであまり聴いたことがないタイプのラップでした。

そのときはまだ「個性的なラッパー」としてしか知らなかったのですが、作品を追って聴くにつれ、

・1st EPではほぼ全曲のビートを自ら制作している
・世界各国のご当地音楽をつなぐオンリーMIXも多数発表

など、ラッパー以外にも様々な顔を持っていることがわかってきて、「この人、いったい何なんだろう…?」と、どんどん気になる存在となっていきました。


そんな風に一見、全貌が掴みにくいKOITAMAさんの活動は、実はご自身のサイトKOITAMA.COMにて詳しく纏められているのですが、今回はそのディスコグラフィーからここでもいくつか抜粋してご紹介したいと思います。

(画像をクリックすると、KOITAMA.COMの作品紹介ページへ飛びます。各作品の試聴はもちろん、ダウンロードリンクやPVもまとまっているので是非チェックしてみてください)


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ラッパーとしてのまとまった作品




2013年の1月に発表した、自身初のEP。

本作以降は他のビートメイカーとのコラボも多いですが、ここでは1曲を除いたほぼ全曲で自身がビートを制作。このEPを聴くと、自作トラックでの作品集もまた聴かせてほしいと思います。
10曲目「Loneliness」の朴訥とした情念が素晴らしいです。



AIWABEATZさんとSHOT-ARROWさん、2人のビートメイカーとの連名でのEP。上に貼ったPVの「PLAYING feat.DKXO」も収録。

ビートが異なる2バージョンを収録した「Party People」のカタカナ英語的な発音が強く耳に残ります。レコード屋巡りの情景描写に、この後の作品でも登場する“高橋くん”との思い出を挟みこんだ「ディスクユニオン」も印象的。




大阪のビートメイカー/DJのchop the onion氏とのコラボ作。

メロウな表題曲でのフックや、モタるドラムとホーンもかっこいい「Avocado Burger」のリリックなど、Twitterでも時折コピペされるパンチラインを多く含む作品。また最終曲では再び“高橋くん”が登場。




上掲の『WEEKEND EP』のアートワークも手がけた盟友、おひたしアナルさんとのコラボEP。おひたしさんの羅列ラップはKOITAMAさんとの相性もばっちりです。

ビートは自作の2曲の他、音墨さん・Psychic Gangstaさん・yung new sweatshirtさんなど。またラップでは森光光子さん・MCビル風さんと、多彩なゲストを迎えています。EP本編には収録されていませんが、「Internet」のcariosんによるリミックスも。




ここまでで何だかもう結構長く書いてしまったので少し駆け足でいきますが、続いてビートメイカー/DJとしての活動も見て行きましょう。

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ビートメイカー/DJとしての作品




自身の楽曲でのMPC色の強いヒップホップ的な鳴りのビートの他、レーベル“術ノ穴”のコンピレーションに収録のTomobitchさんの「SOS FROM SNS」ではメロウなシンセループが美しいビートを提供。



また、Tomobitchさんは今年4月に3曲入りのフリーダウンロードEPを発表しており、
ここでもKOITAMAさんが全曲のプロデュースを務めています。


そしてDJとしての活動では、チリやフィンランド、韓国・東南アジア、はたまたブラジルなど、世界
各国さまざまな国のヒップホップのオンリーMIXを制作。



他にも日本と韓国・それぞれの90年代POPSのオンリーMIXなど、さまざまなテーマで聴き応えあるDJ MIXを発表しています。






こうしたいろんな国のヒップホップやポップスを並行して掘っていく感覚は、KOITAMAさんの2014年BEST10のバラエティ豊かなラインナップにも表れているように思います。

また同ブログでは、シンガポールやタイを訪れた際の旅行記と合わせ、
現地でのレコード屋巡りの様子も。
あんなにいろんな国のご当地音楽のDJ MIXをどうやって…、と不思議に思っていましたが、このようなブログ記事はそうしたMIX制作の裏側のようで、楽しく読めます。

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さてさて、
ここまで読んでいただけた方はKOITAMAさんという人がわかったような、いやよりわからなくなったような、不思議な感覚だと思います。

それではご本人にお話を聞いてみましょう!ということで、KOITAMAさんにインタビューをさせていただきました!

音楽にのめり込むようになったキッカケから、ラップでの独自の発音、ビートメイキングやDJのこと、そして“高橋くん”のことまで、いろいろとお話を伺っています。



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KOITAMAさん インタビュー





Q1. 初めにご自身について、簡単な自己紹介をお願いします。

群馬出身、埼玉在住、毎日東京まで通勤する音楽好きのサラリーマンです。
年齢は… 30代です。


Q2. 音楽を好きになったきっかけを教えてください。

きっかけは小学2年生のとき、父親の勧めで音楽教室に入ったことだと思います。

最初は嫌々でしたが、少しずつ自分から興味を持つようになり、音楽教室の帰りにレンタルレコード店に行くようになりました。


Q3. その後の音楽遍歴を教えてください。


中学生の頃は吹奏楽部に入りつつ、ビートルズとかレッドツェッペリンとか洋楽のロックを聴いていました。
高校生の頃からパンク、ハードコア、ロカビリー、サイコビリー、ヒップホップなど雑多に聴くようになりました。

某服飾専門学校に進んでからロンドンナイトに行ったり、パンク、ニューウェイブのレコードを集めるようになりました。そのうち学校の課題提出が追いつかなくなり、退学しました…。


1年くらいフリーターをした後、別の専門学校に入学しました(笑)。そこで高橋君という友達に出会い、レコードのことを沢山教えてもらいました。トラック作りもその頃始めました。

その後、地元の後輩にトラックを提供するようになり、デモテープもいくつか作りました。ブラストのデモテープのコーナーに掲載されたこともあります(笑)。続けていくうちに自分のイメージと乖離があることに気づき、ラップも始めました。


Q4. ラップする際のゆっくりと話すようなフロウや、
カタカナ英語的な発音は個性的ですが、ラップを始めた初期から独特のスタイルは確立されていたのでしょうか?スタイルの形成段階で誰か影響を受けたラッパーはいますか?

英語の発音が難しくて自然にそうなりました。
潜在的に影響を受けた人はいると思いますが、明確にこの人というラッパーはいないと思います。

カラオケでラップするときはその人になりきりますが…。


Q5. これまでに共にまとまった作品を作ったAIWABEATZさん/SHOT-ARROWさんや、CHOP THE ONIONさん、おひたしアナルさんについて、それぞれコラボレーションに至った経緯などあれば教えてください

『PLAYING EP』、『WEEKEND EP』はそれぞれ声をかけてもらって制作しました(感謝!)。


『ACID ANAL EP』はおひたしと遊びながらノリで作りました。


Q6. またラッパー諸氏との共作では、過去に数度コラボしているNICE GUY$や、
DKXOさん、森光光子さん・MCビル風さん、cariosさんなど多くのラッパーと共演されていますが、こうした人選はどういう基準で選ばれてたのでしょうか?

NICE GUY$から声をかけてもらったり、AIWABEATZからDKXOくんを紹介してもらったりして制作しました。

誘っていただけることはすごくありがたいことなので、タイミングが合えばいつでもやりたいです。

森光さんとビル風さんはオモシロイ曲になりそうな予感がしたので、トラックを聴きながらおひたしと決めました。
森光さんもビル風さんも僕と同じくラップもするしトラックも作るのでシンパシーを感じています。

「Internet」はシングルで発表したときにcariosくんからトラックの評価をいただきつつ、ラップものせていただけることになりました。
自分のトラックにcariosくんのラップがのったことがすごく嬉しかったです。


Q7. ほぼ全曲のトラックを自作した『Love Ya Like』での陰りのあるビートはいかにもMPC的な鳴りですが、ビートメイク作業は全てMPCで完結されているのでしょうか?また、近作では他のビートメイカーとのコラボが多いですが、自作曲中心の作品は今後リリース予定はありますか?

『Love Ya Like』は9割サンプリングなので、AKAI MPC1000でほぼ完結しています。今はAKAI MPC1000でチョップしたり、ループ組んだり曲の軸を作ってから、Ableton Liveでドラム、ベース、メロディなどを追加しています。

非効率ですが、いろいろ試した結果MPCの波形が一番信用できるのでこの形になりました。自作曲中心の作品は今制作中です!


Q8. 『Playing Ep』の「ディスクユニオン」に登場し、その後「Takahashi Kun」という曲もリリースされた"高橋くん"は実在の人物なのでしょうか?今後も"高橋くん"についての曲をリリースする予定はありますか?


前述の高橋君のことです。実在の人物かつ、曲中のシーンも実話です(笑)。高橋君にレコードのことを沢山教えてもらってから世界がひらけました。

今、高橋君は埼玉県で多目的スペースを運営しつつ、フリージャズのライブなどを企画しています。今後も曲中にはチラッと登場するかもしれません。高橋君からの影響は大きいです。


Q9. また、DJとしての活動についても質問させてください。これまでに多くの韓国音楽MIXをはじめ、東南アジア・チリ・ブラジル・フィンランドなど世界各国・さまざまな国の音楽でDJ MIXを制作されていますが、
こうした音楽はどのように調べて掘られているのでしょうか?また、今音楽的に注目している国などありましたら教えて下さい。

9割ネット、1割本で調べています。

「国名 RAP」でYOUTUBE検索して、気になるアーティストを見つけたら、DISCOGSでリリース状況、LAST FMでその周辺のアーティストを調べます。

音源はiTunes、Bandcamp、Amazon MP3などで手に入れます。どうしてもフィジカル盤でしか手に入らない音源は現地のサイトで購入します。

気になる国はいろいろありますが、ネットでフィンランドのヒップホップシーンの相関図を見つけたので、またじっくり調べたいです。


Q10. 今までに聴いた音楽から、今の気分でのベスト・アルバムを3枚と、
オールタイム・ベストのアルバムを1枚教えて下さい。

今の気分でのベスト・アルバム:

Brian Eno / Music for Airports
Penguin Cafe Orchestra / Music From The Penguin Cafe
タイプライター / 0 (ゼロ)

オールタイム・ベストのアルバム:

Steve Reich / Music for 18 Musicians


Q11. 今後の展望や構想、予定しているリリースなどありましたら教えてください。

全曲自作トラックのアルバムをとにかく早めにリリースしたいですビートテープも作りたいですし、トラックの提供もしたいです。

あと地元の後輩でオモシロイ奴がいて、そいつのアルバムを作ってツイッターのタイムラインに放り投げたいです(笑)。
普段インターネットもライブもやらない奴なんですけど、黙々とレコードを買ったり、フリースタイルをしたりしてるんですよ。インストを10曲作って渡してから、もう2年経っても進んでいないので、実現不可能かもですが…。

いろいろやりたいことはありますが、コツコツやります。^^



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はい!というわけでインタビューさせていただきました。


このインタビュー以外でも、上でも引用させていただいたHi-Hi-Whoopeeでの萩原アズサさんの記事や、韓国ヒップホップ情報サイトHIPHOP [K]ONVEYで行われた韓国ヒップホップについてのインタビューなどもすごくおもしろいので、ぜひ読んでみてください!


今回スペース的に取り上げきれなかった他の楽曲も様々なコラボを含む良い曲いっぱいですし、今後もKOITAMAさんはコンスタントに作品を発表されると思います。

KOITAMAさんのTwitterSoundCloudKOITAMA.COMでのブログなどでこの後もぜひKOITAMAさんの活動をチェックしてみてください!

2014年9月26日金曜日

【ゲスト寄稿】Wave Racer以降のFuture Bassシーンの紹介とエクスクルーシヴMIX(DJ BOOT BEAR)




こんにちは!ヤングです。


第1弾:ステューピッド小僧さんによるFlow-Fi解説とエクスクルーシヴMIX

https://soundcloud.com/stupidkozo/mirai/s-0mAK4

第2弾:iddyさんによるサンクラ謎アーティストストーキングのススメ


とお送りしてきました、 “日々SoundCloudをディグしている人たちに、新しいあのレーベルや気になるあのシーンについて解説していただく” この寄稿シリーズも第3弾!

そして一旦の最終回です。

最終回に登場していただくのは、沖縄のDJ BOOT BEARさんです!



DJ BOOT BEAR




DJ BOOT BEAR プロフィール

沖縄県出身。
趣味のHIPHOPのアナログレコード集めが高じてDJキャリアをスタートさせ、
オーストラリア留学中にはフューチャービートやClub Remixに影響を受ける。
帰国後は地元沖縄にて勢力的にDJをこなす傍ら、
今年7月には福岡からステューピッド小僧をゲストに迎え
新譜HIPHOPパーティー"FUTURE CLASS"を主催し成功させている。
現在は毎月最終火曜日、那覇は美栄橋のRecord & Music Bar「on」にて
"nyce & slo"のレギュラーDJを務める。





そして記事のテーマは、オーストラリアのWave Racerらを中心とした、「Neon」「Wavy」と呼ばれるシーンについてです!



「Nintendo 64のサウンド」とも形容される、ゲームBGMにも似たキラキラしたシンセ、ロマンティックなコード進行、Trap以降を感じるリズム構築…

Wave Racerはこうした音楽の始祖ではありませんが、シーンに強く認知させ、流行のサウンドを作った存在だと言えると思います。

ハッキリとした特徴付けはむずかしく、そのせいかジャンルの呼称も定まらないシーンではありますが、SoundCloudではズバリ #WaveRacer とタグ付けされた曲も多く、そこから派生してか 「Wavy」、またはキラキラしたシンセの音色からとって「Neon」と呼ばれることもあるようです(他にも呼び方は様々…)。



この記事では、下記でも大きく紹介されているPUSHERが使ってる名称を借りて「Neon」シーンとして、シーンの紹介記事を書いていただき、また関連音源を中心とした30分弱のMIXも提供してもらいました!

DJ BOOT BEARさんのMIX作品は、盟友・ステューピッド小僧さんのLive Show、Abysmal Loungeにゲスト参加した(アーカイブがここで聴けます)以外では、これが初です!


前置きが長くなってしまいましたが、それでは記事、MIXともにぜひお楽しみください!



2014年9月19日金曜日

【ゲスト寄稿】注目すべきフォロワー1000人以下のミステリアスなSoundCloudアカウント(iddy)





こんにちは!ヤングです!

さて前回のステューピッド小僧さんに引き続き、 “日々SoundCloudをディグしている人たちに新しいあのレーベルや気になるあのシーンについて解説していただく” シリーズも第2弾です。

今回寄稿していただいたのは、ユニットKCR+iddyでラッパーとしても活躍するiddyさんです!



iddy



KCR+iddy プロフィール: 

1997年頃、iddyが高校の同級生だったKCRを誘ってラップを始める。
それからそれぞれ様々な活動や長い休憩を挟みつつ、
15年のときを経て2012年にユニット結成。
結成以後はレーベル 術ノ穴 のコンピ術ノ穴Presents "Hello!!! Vol. 6"に参加し、
今年7月には期間限定で公開した新曲デモ2つが局所的ながら高評価を集めるなど、
マイペースながらも精力的に活動中。




そしてそして、KCR+iddy、EP制作期間中とのことで、7月に公開していたデモ2曲は現在非公開になっていたのですが、今回お願いして、特別に記事の公開に合わせて期間限定で再公開してもらいました!(ウオー)





リリック、フロウ、テーマの選び方まで、日本のヒップホップにあまり似た立ち位置が見つからない存在感を感じて頂けると思います!


個人的にKCR+iddyに関してはまだまだいっぱい書きたいこともあるのですが、しかしながら今回はラッパーとしてではなく、TwitterでSoundCloudストーカーとしても知られるiddyさんのソロで寄稿していただきました。


書いていただいたテーマは
注目すべきフォロワー1000人以下のミステリアスなSoundCloudアカウントです!

以前このブログでも取り上げた"FoFoFadi"もそうですが、近年のSoundCloudの楽しみ方の一つに「覆面/サブアカや謎のアーティストの正体を探す」というのがあります。


サブアカといっても昨今はアーティスト側も(ある意味本アカより)本気で取り組んでおり、当初は覆面サブアカだったはずが、その名義のままFOOL'S GOLDと契約してしまったHOODBOIや、Jeffree'sからオリジナル曲をリリースしたTrippy Turtleなどの大躍進も記憶に新しいところです。

しかしながらその多くは変名/覆面で、ひっそりと活動を行っているのでなかなか実態を掴むのも難しい状況…。

そんな中、「ネットストーキングの域」といわれるSoundCloudディグに定評のあるiddyさんには、「フォロワー1000人以下」(つまりまだほとんど話題になっていない)という条件付きで、気になる "怪しい" アカウントをいくつか紹介していただきました!


*文中に記載しているフォロワー数は記事執筆当時のものです。


以下に紹介していただくのは、実はあの有名人の隠れサブアカかもしれませんし、もしくはSoundCloudの闇かもしれません!


それではお楽しみください!



2014年9月17日水曜日

【ゲスト寄稿】ビート・シーンの鍵を握る新興レーベル、Flow-Fiの紹介とエクスクルーシヴMIX(ステューピッド小僧)




こんにちは!ヤングです。

さて皆さま近頃はSoundCloudなどをチェックされてますでしょうか。
いわゆるフューチャービート系(便宜上の呼び方ですが)では、SOULECTIONも設立から3年が経ち、すっかり大御所としての風格を帯びた昨今、さらに下の若い世代による新興レーベルなどの動きも活発になっています。


そうしたフューチャービート・シーンの新しい動きを捉えるために、今回は初の寄稿記事として、いま飛ぶ鳥を落とす勢いの福岡のDJ、ステューピッド小僧さんにゲスト記事を執筆していただきました!



ステューピッド小僧 プロフィール:






1992年生まれ。カナダ留学時にSOULECTIONのパーティーなどに感銘を受け、帰国後は地元福岡を中心にDJとして精力的に活動している。フューチャービートと最新のヒップホップをシームレスに聴かせるプレイを身上とする。

SoundCloudにも多数のMIXをアップしており、盟友DJ ficoと立ち上げたLive Show、Abysmal Loungeでは毎週月曜日にDJ MIXを生配信している。



さらにさらに(ウオー)、今回記事と連動して関連曲を中心としたエクスクルーシヴDJ MIXも作成していただきました!!!

このMIXを聴きながら読むと何倍も楽しめるようになっています!

ではではぜひお楽しみください!


2014年8月23日土曜日

【和訳】FKA Twigsが「オルタネティブR&Bなんてファック!」と語った理由



こんにちは!

今回の記事は、8月11日に1stアルバム『LP1』をリリースしたばかりのFKA Twigsというアーティストについてのものです。


彼女はジャマイカ系の父とスペイン系の母の間に生まれた現在26歳の女性です。
シンガーとしてのみならず、ソングライター、プロデューサーとしても音楽的才能を発揮しており、今回のアルバム以前には

『EP』(自主リリース、2012/12)  ・『EP2』Young Turks、2013/9)

というシンプルなタイトルの2枚のEPをリリースしています。


また、『EP2』では、異形ともいえるサウンドのmixtape『&&&&&』が高い評価を受けカニエ・ウェストの『YEEZUS』にも参加した新進プロデューサー、Arcaとガッチリタッグを組み、多くのメディアから高い評価を受けました。このEPは本当に傑作だと思います。



彼女の音楽を言葉で表現するのはなかなか難しいのですが、神々しささえ感じるような幽玄なボーカルと、グニャグニャと形を変える無機質なビートとの組み合わせが魅力だと思います。

ドキリとするようなアートワークやビジュアルの見せ方も魅力的なアーティストですので、ぜひPVと合わせて、代表曲「Water Me」を聴いてみてください。





ちなみに上のビデオが「何か怖い…」「ムリ…」という人は(僕も久しぶりに観たらイケるかなと思ったんですけど怖くてムリでした)、最新シングルの「Two Weeks」のPVなら安心ですので、こちらをご覧ください。





1、2曲でもこうしてビジュアルイメージと合わせて見ていただくと、彼女の魅力や方向性が伝わりやすいのではと思います。

さて、このFKA Twigsの不思議な音楽、英米では(日本でもかな)他の新進アーティストと合わせて「オルタネイティブR&B」と括られることが多いのですが、新作アルバムについての英メディア「The Guardian」でのインタビューで、彼女はそうして「オルタネイティブR&B」と形容されることに対しての違和感を露わにしました。

今回和訳したのは、その部分を抜粋して論評した米音楽メディア「Pigeons & Planes」の記事です。

本来ならば「The Guardian」の元記事を取り上げるのが筋ですし、センセーショナルな部分だけ抜粋して取り上げた記事は曲解を生みやすいのでよくないとも思うのですが、
この記事はTwigsのインタビュー部分以外の、前文・後文におけるライター氏の「今日のジャンル論」みたいな部分もおもしろく、共感するものがあったのでこちらの記事を和訳してみました。

いつもながら前置きが長くなってしまったのですが、この下からが記事の和訳部分です。




FKA TWIGS SPEAKS OUT AGAINST BEING LABELED “ALTERNATIVE R&B”






First of all, let’s all just agree that genre classification in 2014 is stupid. 
Music is such a melting pot that there are no clear lines anymore, but we use genre labels because it’s the easiest way we have of speaking about something and giving people an idea of what it sounds like. 
Maybe it’s just lazy, but it certainly can be helpful in communicating about music without just using a bunch of vague adjectives that literally describe the sounds in the songs.

初めに言っておきたいのだけど、2014年の今日において、「ジャンル分け」なんてものはひどくばかげた行為だ。
音楽は様々な要素が複雑に混ざりあったもので、はっきりしたボーダーラインなんて存在しない。
ただ、それでも今もなお僕らがジャンル名を使って音楽を語るのは、他人に「この音楽がどういうものか」というイメージを伝えるにはそれが一番簡単な手段だから。
それはきっと怠慢なのだけれど、音楽についてコミュニケーションしようとするとき、細かな音についての形容詞をいくつもいくつも並べて語るようなわかりづらさを避けるには、それがいまだに一番有効な手段であることも事実だ。


In an interview with The Guardian, the topic of alt-R&B came up and FKA twigs made her opinion on the matter very clear:


『The Gurdian』でのインタビューで、「オルタネイティブR&B」についての話題が出た際、FKA Twigsは、そのジャンルに入れられることへの彼女の違和感を明確に語った。


It’s just because I’m mixed race. When I first released music and no one knew what I looked like, I would read comments like: ‘I’ve never heard anything like this before, it’s not in a genre.’ And then my picture came out six months later, now she’s an R&B singer. I share certain sonic threads with classical music; my song ‘Preface’ is like a hymn. So let’s talk about that. If I was white and blonde and said I went to church all the time, you’d be talking about the ‘choral aspect’. But you’re not talking about that because I’m a mixed-race girl from south London.


「そう言われるのは私が混血だから。
私の音楽が初めて世に出たときは、まだ誰も私の外見を知らなかった。そのときは"こんなタイプの音楽は聴いたことがない。これはどのジャンルにも当てはまらないものだ"なんて言われていた。それなのに、半年もして私の写真が世の中に出回るようになると、すぐに「ああ、R&Bシンガーなんだね」と言われるようになった。
私の音楽には、例えばクラシック音楽からの影響だっていくつもあるの。私の「Preface」という曲は賛美歌のように聴こえると思う。だけどそんな話は誰もしない。
もし私が金髪の白人で、インタビューで「いつも教会に通っていたわ」と語ったなら、同じ曲を聴いてもみんな「聖歌隊からの影響を感じるね」なんて言ってたはずよ。だけど今の私に対して誰もそんなことは言わない。それは結局、私が南ロンドン出身の混血の女の子だから、というだけよ」


She adds:


彼女はさらに付け加える。


I love annoying sounds, beats, clicks. Kakakakaka! I don’t see anyone else doing that now. It’s got loud noises in there, the structures aren’t typical, it’s relentless. It’s like punk; fuck alternative R&B!


「私はおかしな音も、ビートも、クリック音も、「KaKaKaKaKa!」なんてサウンドも大好き!今そういうことをやっている人って他にいないと思う。とてもノイジーで、定型に捕らわれない、情け容赦ない音楽。それはある意味ではPunkみたいなものだと思う。オルタネイティヴR&Bなんてファックよ!」



We’re sorry, twigs.


Twigs、申し訳ない。

(訳注:この記事を掲載したサイトPigeons & Planesは、この数日前に「FKA Twigsが注目される12の理由」という記事で「彼女は実験的なR&Bの最前線にいる」と書いていたのでした)



For us, it wasn’t about race. The cast of characters experimenting with sounds and styles traditionally associated with R&B is a diverse one. When we used the term R&B, it was mostly because of the vocals and the melodies. Where pop and rock music have always had more of a repetitive, rigid vocal structure, the flourishes of varying melodies and abandoned format is what led us to use the word R&B when talking about FKA twigs.


ただ、僕らはもちろん人種を理由に彼女を「R&B」と定義したわけではない。

歴史的に見ても、R&Bというジャンル名は様々な音や要素と関連付けられてきた。僕らが彼女の音楽を「R&B」だといったのは、彼女の歌唱とメロディーラインの魅力においてだ。
例えば多くのポップスやロックは、もっとシンプルで、定形的な歌唱の繰り返しだ。常に変化し躍動している彼女の歌唱と、定形化から逃れ続けるようなメロディーラインが、僕らが彼女の音楽を語るにあたって"R&B"というジャンル名を使った理由だ。

But it’s true that race, location, image, presentation, and association with other acts can sometimes affect genre classification more than the music itself, and that can be harmful for artists who don’t deserve to be oversimplified for the sake of music writers’ desire to lump things together. For R&B, a genre with a deep history and constantly shifting connotation, it’s even more complicated.


しかし人種や出身、ルックス、イメージ、そして他のアーティストとの関係などが、ときに音楽そのものよりもジャンル分けに影響するのも事実だ。
それは何でも一括りにしたがる音楽ライターのエゴであり、形骸化を好まないアーティストたちにとっては害悪でしかない。
R&Bというジャンルひとつをとっても、そこには長い歴史と、いくつもの変遷があり、それはとても一言では言い表せないほどに複雑なものだ。

Anyway, labeling music is hard these days, and maybe we should all think about abandoning it altogether. I prefer the “kakakakaka!” description far more than any genre classification anyway.


とにかく今日、もう音楽を単純なジャンル分けで括るのは非常に難しい。そしておそらく僕たちは、「ジャンル」というものを放棄しなければいけない時期にきているだろう。

僕はどんなジャンル名よりも、「kakakaka!」という表現の方が遥かに魅力的だと思う。


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この記事は米音楽メディアPigeons & Planesに掲載されたライターConfusion氏(*)による記事を和訳したものです。

http://pigeonsandplanes.com/2014/08/fka-twigs-on-alternative-rnb/

(*=ライター名ですが、主要記事を多く書かれてるし、Pigeons & PlanesのTwitterアカウントのユーザー名も「Confusion」なので、これは勝手な想像ですが"編集部"名義みたいなものなのでしょうか…)



2014年7月29日火曜日

【和訳】noiseyによる #FoFoFadi の紹介とインタビュー

こんにちは!さて、いきなりなのですが皆さんは"FoFoFadI"というのをご存知でしょうか。

ある人はSoundcloudにて、謎の動物キャラのアーティストたちがアップしたR&B Remixで「フォフォファディ…」という印象的なボイスタグを聴いたことがあるかもしれませんし、またあるいは
TwitterやFacebookなどのSNSで「#FoFoFadi」という不思議なハッシュタグを目にしていた人もいるかもしれません。

「"FoFoFadi"ってたまに見聞きするけど何なの?」と思ってた人もいるかと思います。

この"FoFoFadi"というのは海外の数名のビートメイカー/プロデューサーたちのクルーです。


彼らは皆それぞれ動物を冠した名前を名乗っています。そうして正体を隠しているのですが、既に一部では名のあるプロデューサーの変名である場合も多いようです。
彼らは他にもいくつかの設定を共有しています。

"FoFoFadi"のメンバーが共有する設定については(上記に挙げたものとも重複しますが)

①アーティスト名に必ず動物の名称が入っている。

②アーティスト名が、頭文字が同じ2単語。
Cashmere Cat、Trippy Turtle、Girly Gorilla、...など)


絶対条件としては上記2つですが、他にも概ね共通する傾向としては

③エモいコード進行のシンセ+Trap以降の重いビートを主体に、R&BやHipHopのRemixを作る
④他の名義でも活動しているミュージシャンの変名である

というのもあるかな~と個人的には思っています。
例えばこの"FoFoFadi"ムーブメントを牽引する存在でもある「Trippy Turtle」の楽曲でいうと



条件①②はTrippy Turtleという名前でクリアしています。


③に関しては、この楽曲はTrey Songzの同名曲のリミックスですし、音楽的な特徴に関してもわかりやすいと思います。
④は、Trippy Turtleは本国ノルウェーではポップシンガーとしてのキャリアもある、有名なアーティストの変名です。
もう顔出しもバンバンしてるので検索すればだいたい正体もわかるかと思うのですが、一応本人が公式にそう言及したわけではない(?)と思うので、ここに書くのは何だか憚られるので止めておきます。


ただ条件③④はあくまで「現時点ではそういう傾向」というだけで例外もあります。

③はそもそもCashmere CatやTrippy Turtleら、先行して活躍するメンバーの曲の印象に引っ張られているだけかなとも思いますし、まだ主要メンバーの曲も出揃っていないので何とも言えません…。

④も今はまだ多くのメンバーが正体不明ですので、これも現時点では何とも。
ただ国内外問わず、この"FoFoFadi"ムーブメントを追いかけている人たちには、ふざけた名前とキャラクターに隠れた彼らの正体を解き明かしてやろうと楽しむ人も多く、「誰かの変名である」というのはある種の前提というか、共通認識にはなっていると思います。


しかしまだまだ不明点が多い"FoFoFadi"。
本人たちだけでもまだまだ謎だらけなのに、最近では公式メンバーではないのに勝手に"FoFoFadi"を自称するフォロワーたちや、類似したコンセプトを掲げた変名ミュージシャンもどんどん増えて、ますます混乱を呼んでいます。


そうした"FoFoFadi"クルーとそのムーブメントについて、UKの音楽メディアnoiseyが取材をしてくれています!

MEET THE CARTOON ANIMALS MAKING DIPLO-APPROVED POP MUSIC

"FoFoFadi"について珍しく本人たちのキチンとした声明がとれたこと、またPC MusicSadboysなど日本からではイマイチ動向がわかりにくい同世代の別シーンたちについても少し触れてくれていることなど、おもしろい記事となっているので翻訳してみました!

(勝手にやったんですけどnoiseyって同系メディアのVICEの日本語版があるしこれは怒られそうな気がするぞ)

拙い翻訳で読みにくいとは思いますが、"FoFoFadi"やその周辺については日本語記事がとても少ないので、こうしたシーンの同時代的なおもしろみとかが一部分でも伝われば嬉しいなと思います。

(翻訳に際してはいつもお世話になっているぺちこさん @mpecci515 に今回もご協力頂きました)

前置きが長くなってしまいましたがこの下からが記事の翻訳部分となります!ではお楽しみください!的な!怒られたくない!






MEET THE CARTOON ANIMALS MAKING DIPLO-APPROVED POP MUSIC

By Patrick Mills







Music, like any art form, finds inspiration in strange places. Yeezus was inspired by the architectural work of Swiss-French pioneer Le Corbuiser, Macaulay Culkin must have seen something relevant inside the deep-pan Hawaiian he ordered the night Lou Reed passed, and Lil Wayne has written over 102 lines about bowel movements.


音楽は(他のあらゆるアートと同様に)、ときに思わぬところから想像のきっかけを得るものだ。

例えばカニエ・ウエストの『Yeezus』は、建築家ル・コルビュジェの創作から大きなインスパイアを受けている。マコーレー・カルキンはルー・リードの逝去とハワイアン・ピザに何らかの因果の繋がりを見出したようだし(*訳注1)、また、リル・ウェインは便通に関するリリックをもう102行以上は書いている。

(*訳注1)=映画『ホーム・アローン』シリーズで有名な俳優のマコーレー・カルキンは現在、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド及びルー・リードの曲の歌詞をピザに置き換えて唄う「ザ・ピザ・アンダーグラウンド」というカバー・バンドを結成し、精力的に活動しています。



But the above are anomalies - reference points specific to each artist. In today’s world – where artists with no albums get thousands of Soundcloud plays – musicians are increasingly becoming inspired by technology, both its past and future.


上記には少し特殊な例ばかりを挙げたが、参照点はそれぞれのアーティストにより異なる。そして昨今 -アルバム1枚もリリースしていないアーティストたちが、Soudcloudで数千回の再生回数を得るのも当たり前になった昨今- では、ミュージシャンたちは過去、あるいは未来におけるテクノロジーの有り様からより多くのインスパイアを得ているようだ。




Take a look at PC Music. You don’t even need to know who the people behind it are - the name alone suggests they create music that sounds like a club night put on by the Paperclip in Windows 95. When he isn’t rapping about “getting [his] balls licked by a Zooey Deschanel look-alike”, Yung Lean ghostrides smart cars. A song exists that is literally about uploading GIFs on to Blogger.


例えば"PC Music"というクルーを見てみよう。ここでは彼らの正体がいったい何者なのか、ということなどはあまり重要ではない。このクルーはその名前だけで、あなたの脳裏にまるでWindows95のPaperclip(アシスタント・キャラクター)が創造したクラブ・ミュージックのような、奇妙な音楽を連想させるだろう。

また、Yung Leanは、彼がズーイー・デシャネルとの情事を妄想しながらラップ(*訳注2)していない日も、いつだってドアからふてぶてしく身を乗り出しながらスマートカーを乗り回しているだろう(*訳注3)。
日々Bloggerなどに投稿され続けるGIFのように、楽曲は楽曲それだけのものとしてインターネット上に存在している。


(*訳注2)=Yung Leanの楽曲「GINSENG STRIP 2002」中のリリックです。

(*訳注3)=「Ghostride」というのは、走行中の車のドアを開けて身を乗り出す危なっかしい行為。昔の暴走族の「ハコノリ」に近いのかもしれません。Yung Leanの楽曲「Yoshi City」のPVにスマートカーのドアから身を乗り出してGhostrideするシーンがあります。



Music keeps moving and as it does, the things that inspire it get stranger. The next in line in the trend of internet-led music scenes comes from a collective that, essentially, consists of Pokémon and cartoon animals.


音楽シーンの動きは常に変わり続けているし、それに伴ってインスパイアの源もどんどん奇妙になってきている。インターネットを活動の中心とする音楽シーンにおいて、いま、次のトレンドとなりつつあるのはポケモンや動物キャラクターたちで形成されたコレクティヴだ。







Led by a guy called Trippy Turtle, the first is a gang known as FoFoFadi, which sounds like one of those bizarre names people give their genitals when they don’t want to say cunt in public. Trippy Turtle’s music sounds like future sex jams – he’s owning 2020 in the same way The Weeknd owned 2010. 

「Trippy Turtle」という(まるで性器の隠語のような)名を名乗る人物も、"FoFoFadi"なるギャングの一員として知られている。さながらThe Weekndが2010年の音楽シーンを象徴していたように、Trippy Turtleは2020年の音楽シーンを象徴している。



The FoFoFadi crew is made up of a bunch of other animal-based artists: names like Girly Gorilla, Booty Beaver and Drippy Dolphin. Drippy is one of the best, creating endearing music that puts you in the strange middle ground between feeling pilled up to the eyeballs and possibly just needing an Ibuprofen and a nap. His track “Craaazy” mashes up 90s pop munchkin Aaron Carter, the Vengaboys, and machine guns.


"FoFoFaDi"クルーはそれぞれに異なる動物の名を冠したアーティストたちによって構成されている。例えばGirly GorillaBooty Beaver、それからDrippy Dolphinといったように。

Drippyの楽曲が一番わかりやすい例だろうが、彼らが作り出すかわいらしい音楽を聴くときあなたは、ドラッグでめちゃくちゃハイになったような高揚と、もう頭痛薬だけ飲んで昼寝してしまいたいような憂鬱の、奇妙な中間点にいるような気持ちになるだろう。
Drippy Dolphinの楽曲「Craaazy」は90年代のポップ・ミュージシャンAaron Carterと、The Vengaboys、それから機関銃の音とのマッシュアップだ。





Trippy has recently been signed to Mad Decent imprint Jeffrees, a suggestion that there’s a place for this sort of music outside Soundcloud. The crew are associated with Cashmere Cat, too – who makes tracks that bounce from trap-heavy basslines to the kind of music you imagine J-Pop star Kyary Pamyu Pamyu listens to while her advisors apply her makeup.

先頃、Trippy TurtleがMad DecentのサブレーベルであるJeffreesと契約したことが大々的に発表された。これは彼らのようなアーティストたちが、今後続々とSoundcloudの外へと飛び出してくるであろうことを示唆している。また、トラップのような重たいベースラインから、J-POPスターのきゃりーぱみゅぱみゅがメイク中に聴くような楽曲まで、幅広いスタイルの音楽を制作するCashmere CatもFoFoFaDiクルーの一員だ



I wanted to talk to Trippy Turtle to understand more about the scene but was told he doesn’t do interviews because he’s a turtle. Fair enough. So I spoke to an unnamed FoFoFadi board member instead.


私はこのシーンについてもっと深く知るため、Trippy Turtleにインタビューを申し込んだ。しかし彼はインタビューに答えることができないという。亀だから。それでは仕方ない。


ただ、その代わりにFoFoFadiクルーの名も無き一員、だという人物が匿名でインタビューに答えてくれた。



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Noisey: Hi unnamed person on the internet. What is the FoFoFadi and what does it mean?


こんにちは、インターネットの匿名希望さん。FoFoFaDiというのは何?どういう意味があるの?


FoFoFadi is a collective of creative animals working together on artistic projects. What it means is a philosophical question.


FoFoFaDiは"クリエイティヴな動物たち"の集団なんだ。いっしょにアーティスティックなプロジェクトに取り組んでいる。「FoFoFadiってどういう意味?」というのは…それは哲学的な質問になってしまうね。



Where could this movement end up?


君たちの最終目標は何なのかな?


World peace.


世界平和。



Who are the prominent members of the crew?


クルーの主要メンバーを挙げてくれる?


Artists scheduled for musical releases at the moment are: Trippy Turtle - Cashmere Cat - Drippy Dolphin - Booty Beaver - Girly Gorilla - Faded Fox - Wasted Whale - Epileptic Elephant and Disco Duck.

The FoFoFadi crew are perhaps the biggest musical crew with animal names - but they’re not alone. With their rise has come an offshoot that call themselves the Pokecrew; a similar concept but rather than basing themselves on animals, they keep the late 90s Gameboy dream alive and create through the eyes of Pokémon. Led by artists like Bubbly Bulbasaur and Dope Diglett, the movement is still in its infancy but is every bit as intriguing as FoFoFadi.

音楽的なリリースが予定されてるメンバーは、 Trippy TurtleCashmere CatDrippy DolphinBooty BeaverGirly GorillaFaded FoxWasted WhaleEpileptic Elephant、それとDisco Duckだね。


"FoFoFadi"は「動物の音楽家たちのクルー」としては一番大きいかもしれないけど、でもこういうのって僕らだけじゃないんだよ。

例えば"Pokecrew"という、分派のような存在も生まれている。コンセプトは僕らとよく似ているけど、彼らは動物じゃなく、ポケモンのキャラクターになりきることで、90年代後半のゲームボーイ時代の世界観を復活させてるんだよね。中心的なメンバーにはBubbly Bulbasaur(フシギダネ)やDope Diglett(ディグダ)がいる。彼らの活動はまだ始まったばかりだけど、"FoFoFadi"クルーもみんな、彼らの一挙手一投足には注目しているよ。








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One of pertinent things about the FoFoFadi movement is that the influence of cartoons, video games, and Japanese culture on today’s pop soundscape cannot be understated. Ryan Hemsworth – a self confessed Pokemon addict – has said his gigs are filled with “music nerds, people who are obsessed with video games and Pokemon, hot girls, and gay dudes”. Both Hemsworth and British producer SOPHIE are collaborating with the aforementioned Kyary Pamyu Pamyu. These collectives feel like the next step on from this.


FoFoFaDiについて話すならば、コミック・TVゲーム・そして日本のポップ・カルチャーからの影響は無視できない。「重度のポケモン・オタク」であると自他共に認めるRyan Hemsworthによれば、彼がライブする際のフロアは"音楽オタク、ビデオゲームやポケモンを愛していて、それと同じぐらいにかわいい女の子が大好きな奴ら、そしてゲイの男の子たち"、で常に一杯だそうだ
そしてそのHemsworthと、UKのプロデューサーSOPHIEは、前述のきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボレーションも進行中であるという。彼らもまた同じようなポイントから、さらに次なる一歩を踏みだそうとしているのだ。


The interesting thing about the FoFoFadi movement - and the other polarising scenes that've popped up over the past year, (the Sadboys and PC Music) - is that they inhabit their own universe. This is a good thing and important to their longevity. Pop music should be an escape from reality - whether that be Miley Cyrus straddling a giant dog with laser eyes, Katy Perry shooting whipped cream from her tits or, now, an animated turtle doing a remix of Ludacris. Pop stars are characters, and while we’re not saying that the FoFoFadi are quite up to Bowie or Prince levels of enigma, there’s a certain playfulness that lays within their heart.


興味深いのは、この"FoFoFaDi"クルー、そして同じくここ数年で脚光を浴びるようになったいくつかのコレクティヴ(例えばYung Leanを擁するSadboysや、PC Music)に共通して言えるのは、彼らは自分たちだけの世界観を造り上げ、その中に暮らしていることだ。これはおもしろい特徴だし、おそらくは彼らのキャリアを長続きさせる要因にもなるだろう。
ポップ・ミュージックはつまらない現実からの逃避でなければならない。マイリー・サイラスは自身のライブにレーザーで目の光る巨大な犬を登場させ、また同じく巨大なホット・ドッグに跨りながら熱唱する。ケイティ・ペリーは自身の両胸から嬉々として生クリームを噴出させる。そして今は、亀のイラストのキャラクターがせっせと動いてLudacrisのRemixを造っている。
ポップスターとはキャラクターなのだ。"FoFoFadi"がデヴィッド・ボウイやプリンスと同等の象徴性を持っているとは言いがたいだろうが、悪ふざけと遊び心ならば彼らだって負けてはいない。



This music is not for everyone – and at certain times I can’t bring myself to listen to yet another gunshot / Spice Girls mash-up. But at the end of the day I would rather spend five minutes with a cartoon beatmaker called Epileptic Elephant than have to hear a Clean Bandit song ever again. And, if nothing else, they’re having fun. Which is much more than you can say for alt-J or whatever other bunch of ‘real musicians’ you want to choose in 2014.

彼らの音楽は万人向けではないだろう。正直に言って、私も「銃声まみれのスパイス・ガールズRemix」なんてもう聴きたくないと思うときもある。それでもやはり、一日の終わりに、5分だけ落ち着いて音楽を聴くとして、毎日どこに行っても流れているClean Bandit(UKの若手バンド
)の曲をまた繰り返し聴くよりは、Epileptic Elephantなどと名乗る動物キャラのビートメイカーを聴く方がいいと思ってしまう。
そして、なんといっても彼らはふざけた遊び心を持ち、楽しんでいる。それだけでも、この2014年に、Alt-J(UKの若手バンド)や、その他大勢の「リアルなミュージシャン」たちよりも、"FoFoFadi"の音楽の方を好んで聴く理由の一つにはなるだろう。